論 考

政局観測――菅氏は安閑としていられない

 自民党総裁選で、二階・菅コンビが一挙に流れを作った。二階氏の派閥は大派閥ではないが、うまくキャスティングボードを握ったわけだ。なかなか手際がよろしかった。

 5派閥が雪崩を打って菅支持に走ったのは、菅総裁選出に際して派閥が力を発揮したのではない。むしろ逆で、派閥が力を失っているから、自派閥だけで動けず、勝ち馬に乗ろうとしたのである。派閥が本当に力を持っていた時代であれば、二階戦略を突き飛ばしただろう。いまや派閥は頭数だけだ。

 10月解散説がかなり有力だ。そうなれば、菅氏の任期は1年ではなく、1か月である。コロナ禍にあって、1か月以内に解散で勝利する体制を築き上げるのは間違いなく難しい。「国民の安全、安心」を掲げたが、やることが違うというブーイングが出る。もし、やる気ならば、コロナ対策どころではない。解散に向けて全精力を投入しなければならない。

 まず、16日に首班指名をうけたら、急ぎ組閣するが、その顔ぶれがどのくらい人気を獲得できるか。たとえば、女性閣僚は大盤振る舞いするだろうか。そして何よりも挙党一致で、ガタガタ文句が出ない顔ぶれにしなければならない。岸田・石破両氏を取り込む度量があるか。

 安菅政権だという見方もあるが、安閑としてはいられない。下手をすると再び、走馬灯のごとくに政権が変わる時代が来るかもしれない。

 逆に、コロナ対策をはじめ、「やってるな!」という雰囲気を醸し出すには、時間が必要だ。菅氏が安倍氏の番頭だったか、逆に傀儡子だったか、あるいは本当の実力を蓄えた農家の長男であったかが問われる。