論 考

安倍隠しへ着々

 それにしても、安倍氏の不本意な! 降板を、自民党内でさして残念がる雰囲がない。やはり党内でも、この辺りが潮時と見ていたに違いない。

 ところでモリ・カケ・サクラは、自民党にとっても早く消したい古傷だから、再調査をするような候補者は断固排除するというのが、多数派の合意である。細田派・麻生派は安倍氏と一蓮托生であって、菅氏が後継としては担ぎ具合がよろしい。ただし、菅・二階共闘が手際よく事態を進めてくれたものだから、派閥としては痛し痒しで、それが両派に竹下派も加えて、みっともなくも派閥会見になった。

 菅内閣が誕生すれば、安倍政治のアトシマツ・キャビネットであるが、目下、いちばん警戒するのは、「安倍政治を総括せよ」の世論である。なんとか、この機運を抑え込みたい。

 本日の読売社説は、そのあたりの心構えを次のように整理した。

 ① 安倍内閣は、財政出動や大胆な金融緩和によって企業業績を回復させ、雇用環境を改善した。菅氏が経済優先で政権を担う姿勢を示したことは、評価できる。

 ② 一方で、成長戦略は、成果が上がっているとは言えない。持続可能な社会保障制度や、財政再建の議論も遅れ気味だ。こうした課題を放置することは許されない。安倍内閣の政策を継続すると言うだけでは、不十分である。

 ③ 長期政権では、公文書の改ざんのほか、記録の廃棄や杜撰ずさんな扱いが次々に発覚した。国民に不信感が広がったのは事実だ。

 ④ 菅氏がいずれの案件も「決着済み」で済ませているのは疑問である。仮に新首相となっても、政権への信頼が揺らぎかねない。政策決定や文書管理のあり方を検証し、改善を図る責任があろう。

 ③④は原因(安倍氏)があっての結果であるが、読売社説はいかにも公正な見識の如くに装い、見事に原因隠しをして、結果の始末だけを注文している。

 昨日本欄で「アトシマツ・キャビネットの後始末」を書いたが、アトシマツ・キャビネットのアトシマツが意味するのは安倍隠しであることが鮮明になった。

 今朝の朝日は首相にふさわしい人の意識調査結果を掲載したが、以前支持率6%だった菅氏が一挙に38%で、石破氏を引き離してトップに躍進した。ノリがよろしいというべきか、人がよろしいというべきか。軽薄単純の見本だ。