論 考

三文芝居はもう飽きた

 どうやら政権・自民党中枢の諸氏の間では、根回ししたか、阿吽の呼吸かはともかくも、安倍氏辞任は少なくとも8月初め前後には十分に想定していただろう。

 政権と与党の実力者2人が組めば、なんでも可能だ。昨年9月の党人事の際、安倍氏が二階更迭を目論んだが、二階氏を推したのは菅氏であった。

 そもそも禅譲は待つものではない。そんなことは気にせずにいい仕事をしているから青天の霹靂になるわけだ。しかも、譲る本人が完全に無力化したのであるから、岸田氏の芽は政権と党の二大実力者の意のままだ。

 石破氏は党員間の人気が高いことになっているが、菅・二階両氏とは疎遠である。「出馬する気なし」「仕事専一」のポーズであった菅氏が、豹変して真っ先に出馬表明したのも安倍的三文芝居が、すでに二階・菅的三文芝居に代わっていたことを示す。

 政治的空白を作らない、安倍氏の残り任期責任論など、理屈はいくらでも思いつくのが、永年政権を担ってきた自民党的ノウハウである。

 なるほど安倍氏の辞任は病気による突発事件であるが、惜しまれつつ去るのではない。いまや、溜まりたまった安倍政治の膨大な負債から、政治を再生させるのが、心ある人々の期待である。

 誰が後継首班たろうとも、安倍政治の踏襲を本気で考えているのであれば、人々の期待を最初から裏切ることになる。

 三文芝居や、ヤルヤル詐偽的政治はご免蒙る。