論 考

体力よりも能力の限界

 安倍内閣のレガシーは何かという記事が増えた。外見としては長期政権の記録である。これは、なかなか大変である。

 昔から勤め人世界では、定年まで勤めあげるには「仕事をしない」ことが大事とされた。仕事をすると、同僚のジェラシーを引き起こす。同僚としては、誰かが仕事で目立つと、自分の位置が相対的に低下してしまうというわけだ。

 さらに具合がよろしくないのは、上司との距離が縮まる。縮まるだけではなく、上司の力量を食ってしまう場合もあって、こうなると、ほぼ職場で浮かされてしまう。

 トップの場合も同様である。本当にリーダーシップを揮えば、部下は大変だ。部下のジェラシーを買わないためには、ほどほどの仕事ぶりがよろしい。御神輿は重すぎてはいけない。だから、官僚の人事を握っているだけではなく、官僚が担ぎやすい御神輿でなければいけない。

 その担ぎやすさゆえに、官僚は公僕たることを無視して、安倍一筋にヒラメをやってのけるのである。俗に、「水清ければ魚棲まず」という。

 実力が伴わなかったゆえに、最大の見せ場となったであろうコロナ騒動が発生しても対応が精彩を欠いた。まあ、仕方がない。ご本人としては、長期政権の記録を作ったことに自己満足するべきだろう。