論 考

コロナもトランプも大厄介

 米国厚生長官のアザー氏が台湾を訪れた。「台湾のコロナ対策が世界でもっとも成功した。オープンで民主的な台湾社会のお手柄」だと称賛した。自分の国でコロナ対策が成功しないのは、その逆だからだと茶々を入れたくなるが、まあ、そんなことは全く気遣っていないらしい。

 台湾が初動に成功したのは、中国が台湾からの調査をすんなり受け入れたという大事な事実もある。

 台湾としては、米国が台湾に肩入れする理由が何かを重々承知している。台湾に熱い態度で接してくれるのは歓迎だとしても、心配は米国の自国第一主義である。中国と台湾の関係を突きまわして緊張を高めるだけで、ハシゴを外されるようなことになれば、台湾にとっては藪蛇である。

 この心配は杞憂ではない。なにしろ、トランプ氏が内外に繰り広げている事態をみれば、単純に喜んではいられない。そもそも「民主」なる言葉に重みがない。トランプ氏が煽動家にすぎないことを、政治的センスのある台湾の人々は十分に知っている。

 香港警察が、民主派の活動家を逮捕した。外国勢力との共謀と詐欺を理由としている。台湾も香港も、形式的には中国の国内問題である。これは、蒋介石の時代も、毛沢東の時代も一貫して中国は1つというのが国際的認識である。

 米国が、本気で介入する意志があるのか。もちろん、介入の仕方によっては米中戦争も危惧される。それが米中間だけで終わらないと考えるのが常識だろう。無定見、無知、無恥、無謀、無責任なトランプ氏をみていると、ただただ世界がかき回されるだけで、危なくて仕方がない。願わくば、一刻も早く政権から離れてほしい。