論 考

内外を分断する品位なき政治

 麻生氏が民度発言したことが、大方の人々に嫌われ軽蔑を食らった。これが民度、あるいは人々の品位というものである。

 ニューヨーク州バッファロー市での警察官による黒人殺害事件抗議デモに参加した、75歳男性が警察官2人に突き飛ばされて負傷した。

 トランプ氏は、男性をアンティファ(ファシズム反対の活動団体だが、トランプ氏らは急進左翼だと決めつけている)のメンバーで、大げさに倒れて負傷したとツイートした。もちろん人々は怒っている。

 フランス・パリ検察検事長はコロナウイルス感染拡大をめぐる国の対応について捜査を開始した。行政上に対する捜査ではなく、過失致死や人命を危険状態に置いたかどうか、刑事事件として犯罪となり得る行為の判断をするのだそうだ。大統領は刑事免責特権があるので該当しない。

 アメリカもフランスもデモクラシー先進国である。フランスは革命以来、人々の権力に対する強烈な監視姿勢の伝統が脈々としてある。政局の安定は権力者の腐敗と堕落をもたらす。人々のための政治を安定させるためには、政局は不安定のほうがよいという極めて明確な志向性だ。

 アメリカの人々は星条旗の下に結束する意識が強いが、トランプ氏が自分を中心にして、人々を敵か味方かに分けて対応しているから、大統領職にあるものがせっせと国内を分断している。

 アメリカ・ファーストは、共和党ファーストであり、なかんずく核心はトランプ・ファーストに過ぎない。

 こちら自民党は、昔からジャパン・ファーストを掲げる国家主義政党であるが、実は、自民党ファーストであって、なおかついまは安倍ファーストの政治を展開している。トランプに対するおべんちゃら路線は日米関係を歪めた。

 政治家の品位がないと、国は乱れる。これを忘れないようにしたい。