論 考

隠然とした差別意識

 トランプ氏が警官による黒人殺害事件の抗議行動に対して問答無用の態度を取るのは、大統領選挙戦略に基づくという見方が一般的である。しかし、抗議行動は黒人差別に対して異議申し立てをしているのである。

 トランプ氏はれっきとした差別主義者である。本日の読売社説が「トランプ氏はまず融和を語れ」と書くが、そんな融和は百害あって一利なしだ。

 カナダのトルドー首相は、記者がこの間のトランプ氏の発言について質問したのに際して20秒沈黙して考えた後、「わが国にも制度的差別があることを考えねばならない」と答えた。

 外交上の配慮というよりも、人のふり見てわがふり直せと答えたのだと思う。俗な言葉ではあるが、そもそも差別を心地よい人々が少なくないから、トランプ氏が選挙戦略に使おうとするわけで、日本的まあまあで片付けられない。

 わが国にも露骨な他国人に対するヘイト行動があるだけではなく、隠然としてアジア人に対する差別がある。この隠然としてある差別こそが諸悪の根源だ。

 さらにいえば他国人に対して差別する人は、実は同国人であっても、なにやかやと理屈をつけて差別する。

 つまり、格好つけて愛国心を振り回しても、差別根性のある人は根本において他者の人権を認めないのであり、すなわちその精神は人間社会に背馳していると言わねばならない。