論 考

おごりと緩みゆえではない

 「幹部検察官の定年延長の具体的必要性が顕在化した例は一度もない」という、東京地検特捜部OBの意見書には、思わず笑ってしまった。「自らの疑惑隠しのために改正をおこなおうとしているとの指摘は全く当たらない」と語った安倍氏はどんな顔をしたのか、想像したためである。

 「丁寧に説明する」といえば、相手の疑問に答えず、言葉だけ慇懃にして、どこまでも自分が正当だと言い続ける。客観的には真実を隠すことばかりが、この数年続けられてきた。たまたま! 議会で与党が圧倒的多数を占めているから無理が通れば道理が引っ込み続けてきたにすぎない。

 今朝の朝日社説は「検察庁法改正は先送りでなく廃棄せよ」と正しい。読売とても「黒川氏の定年延長の理由を十分に説明しなかったことも不信を招いた要因」と書かざるを得ない。

 毎日は「法案見送りは、おごりと緩みゆえの失態」と書いたが、これは正しくない。数のみに依拠して好き放題の議会運営をしてきたのが歴然としているにもかかわらず、おごりと緩みとするのは正しくない。それでは単なるミスである。ところが安倍氏一派は、そもそも民主主義に背馳し続けているのである。