論 考

大愚に隠れる小愚?

 米国・生物医学先端研究開発局BARDAの元局長リック・ブライト氏が下院公聴会で、トランプ氏は対コロナウイルスのマスタープランが全くないと証言した。たしかに、トランプ氏の最近の発言からして、理論的裏付けがありそうなものは皆無だ。日本の為政者も酷いが、さすがに抜群の酷さである。

 トランプ氏の行動規範(氏の頭の中)は、大統領選再選が軸である。最悪の場合でも、投票前の時期に支持が固まればいいと考えているだろう。

 現在の事態は最悪である。いかに世間に対して鈍感だといえども、かなり焦燥感が強まっている。もととも自身の発言や行動を統御できない性質に加えて、副大統領、国務長官のいずれもトランプ氏の機嫌を損ねないように立ちまわっているから、ほとんど歯止めがない。

 コロナウイルス対策が後手に回っているのを批判されて、「毎年インフルエンザで3.5万人が死亡している」と発言したのは、トランプ氏の真骨頂であった。目下は8万人をはるかに超えてしまった。

 このような超愚人が舞台で跳ね回ると、それ以外の愚人はありがたくもかたじけなくも目立たないわけであって、ゆえに、ずるずると世界中がおかしくなる。コロナウイルスが、世界各国の政治・社会的病理を浮かび上がらせていることだけは間違いない。

 人々に置かれては、自粛疲れなどしている暇はないわけだ。