論 考

ホイッピング・ボーイ

 人間、追い詰められたときに値打ちが出る。トランプ氏が、新型コロナウイルス問題で中国に損害賠償を要求する。

 しかし、イエール大学などの研究では、3月中旬から月末にかけて肺炎とインフルエンザで死亡した人が異常に増加しており、そのなかに相当コロナでの死亡が含まれている可能性が高いという。

 従来、アメリカでの最初の死亡はワシントン州の人で、2月29日とされていたが、2月26日にカルフォルニア州で最初の死亡が出ていたことがわかった。

 また、CDC(疾病対策センター)は、アメリカでの感染者第1号は1月21日と発表していたが、最近の研究では、すでに12月には拡散していたのではないかという説も出ている。

 1月21日よりも感染が早かったとすれば、すべての責任が中国にあるとして、自分の取り組みの失敗を転嫁してやろうとしているトランプ氏の思惑が外れる。最近は、トランプ氏が喋れば批判が倍返しで跳ね返るので、矛先を転ずるという、まことにわかりやすいインチキなのだが、目下、この作戦は成功している。なぜなら、アメリカでは反中感情が60%に高まっているからだ。

 コロナが、大統領選にいかなる影響を与えるかも注目だが、それにしても、世界各国が協力してコロナ禍を克服するべきときに、このような偏狭な思考しかできない人が大統領だということには、いやはやなんとも。