論 考

台湾問題

 BBCの単独インタビューで、再選を果たした蔡英文総統の発言は「われわれは独自のアイデンティティーをもつ」「この国はわたしたちの国だ」「成功した民主主義とかなり妥当な経済がある」「中国から敬意を受けるに値する」などの主張をした。

 「一国二制度」を掲げる中国にすれば、これは全く受け入れられない。国家という枠組みで考えれば、歴史的に台湾はまちがいなく中国である。実際、国民党の蒋介石(1887~1975)は、国共内戦に敗れて台湾へ退いた後、「大陸進攻」を唱えて、1つの国家である立場を取った。

 つまり、台湾の国民党と中国共産党は内戦を戦ったけれども、中国という国は1つであるという主張を共有している。蔡英文氏の進歩民主党DPPはその立場を取らないのだから、目下、中国共産党とは共通の土俵がない。

 内戦で敵対したとしても、当時の人々は「中国は1つ」の意識を共有していた。しかし、新中国建設の1949年から71年が過ぎて、蔡英文氏が主張するように台湾アイデンティティーが育っているのは否定できない。

 「一国二制度」は、時間をかけて1つの国家としてまとまろうという文脈であったが、目下は見通しが立たない。

 蔡英文氏は前述の主張の後、DPPからは(台湾独立の旗幟鮮明にせよという)圧力を受けているが、(自分は)それを抑えている。なぜなら、いまの状態を維持することが賢明だからだと語った。いわば、中国共産党が「一国二制度」を主張するのは勝手だが、とにかく現状維持で行こうという提案なのであろう。

 「一国二制度」と、「独立論」が衝突すれば建設的な歴史の構築から遠のく。これを双方のリーダーが肝に銘じて行動するべきである。いい知恵が出ないときは慎重さこそが最大の知恵である。