論 考

賃金の意味をよく考えよう

 経団連会長の中西氏が、「賃金は、働くことの市場価値への対応」であると語った。要するに、儲けに応じて賃金が決まるという意味である。

 儲かれば賃金が増えるし、儲からなければ減るという、昔から経営者が主張していることのくり返しである。賃金交渉する組合役員はよく体験することだが、経営側が賃金交渉で繰り返すのは「ない袖は振られない」論である。

 一見、わかりやすい理屈なのだが、この理屈でいくと、労働者の賃金はつねに不安定で、生活の安定どころの話ではない。

 これは、もちろん経営側の常套語である。労働者の生身の人間として自分と家族の生活を維持するための賃金論とは相いれない。労働側としては、自分の貴重な時間を労働することで失っている。賃金を獲得すれば、稼いだ気分になるが、「賃金-自分が労働によって失った時間の価値=X」が稼いだ金額であることを忘れないように、労働者と組合はきっちり賃金要求をするべきである。

 賃金を決定するのは、経営者ではなく、第一に労働力を売る労働者1人ひとりなのである。