論 考

逃走事件のこれから

 やはり、ゴーン氏の脱走劇は衝撃である。

 直ぐに1973年8月8日の金大中事件を想起した。こちらは、韓国KCIAが、東京のホテル・グランドパレスから金大中氏(1925~2009)を拉致して、神戸から韓国工作船の龍金号で韓国へ向かった。

 情報を察知した海上保安庁のヘリコプターから龍金号を威嚇、拉致グループは海上で殺害するつもりだったらしいが、断念して釜山へ上陸、5日後に金大中氏は自宅へ帰った。

 同11月に韓国首相・金鐘泌が来日して主権侵害を謝罪し、政治決着した。KCIAの仕業だと認めたのは、2006年であるが、真相はいまだ不明だ。

 ゴーンの場合、フランス政府もレバノン政府も直ちに関与せずの声明を出した。レバノン当局は民間人が合法的に入国したとする。しかし、ゴーン氏が持つブラジル・フランス・レバノンの3つの国籍のパスポートは、弘中諄一郎弁護士がすべて保管しているのだから、偽造パスポートということになる。

 12月29日に関西空港から自家用ジェット機でトルコのイスタンブール経由でレバノンへ入ったというが、出国に際しては専用ゲートがあって、検査を受けないわけはない。

 楽器の箱に入って運び込んだという報道があるが、いずれにしてもかなり大がかりなチームが動いている。パソコンや、スマホの使用も不自由で、監視されていたのだから、どのように工作の連絡を取り合ったのだろうか。

 レバノンの国内事情も汚職・腐敗ありで、なかなか複雑らしい。事業家として国際的に成功したゴーン氏が帰国したと歓迎する声と、腐敗エリートの1人だという厳しい声も出ているそうだ。

 事件自体は、容疑者が海外逃亡しただけであるが、これから何が起こるか!