論 考

hung parliamentこそ正常

 イギリス下院選挙にメイ首相が踏み切ったのは、EU離脱交渉において国内の明確な主導権を握る狙いであった。にもかかわらず、めざすはハード・ブレグジッドだという抽象的な方針以外に煮詰まった感じはない。

 メディアは、労働党コービン党首に過激左派という修飾語をつけたが、穏当なEU離脱方針と、社会保障改革を掲げるのが、なにゆえ過激左派なのか?

 なによりも、イギリス政局は2010年にhung parliament(過半数制する政党なく不安定議会)になって、以後、それを選挙で変えようとしたために、国民投票をすることになり、予想外のEU離脱になってしまった。

 そもそもhung parliamentになっているのは、世論が割れているからであって、数多の政策課題を抱えているのに、イメージ選挙で多数派を制しようなどと考えるのが邪道なのである。

 つまり、時間がかかっても、1つひとつの課題を議会で丁寧に議論する。それなくして、政治が円滑化することはない。厄介な問題があるから議会で論議するのであって、日本流のそそっかしい「決める政治」論にとらわれてしまうと、ますます政局は混乱する。

 日本の「決める政治」なるものは、イギリスよりもさらに性質が悪い。決めない方がはるかに上等な悪法を作ろうとしている。なにしろ日本の政局安定は、すでに議会が機能していない。

 その最大の原因は、「自由・民主」でなく、「権力」党である政党に多数の議席を与えた国民諸氏の選択眼なのである。