論 考

日本の危ない無定見外交

 二股膏薬、または内股膏薬とは、あっちへくっついたり、こっちへくっついたりするので、無定見・無節操を言う言葉である。二股武士というのもあって、二心を抱く侍をいう。サムライ・ニッポンが大好きな安倍内閣の中東海域への海自派遣がみごとに! それだ。

 防衛省設置法第4条を拡大解釈して、(これ、わが官僚政治家が好む方法であるが)オマーン湾からバベルマンデブ海峡まで2,642kmに、情報収集・調査研究の名目で、護衛艦1隻とP3C哨戒機2機を派遣する。

 あほらしい。この距離は北海道から沖縄までの距離よりも長い。

 新聞社説はいろんな御託を並べているが、要するに本音は米国主導の有志連合(海上安全イニシアチブ)参加だ。

 シビアな外交を展開しているイランのロウハニ大統領が来日して、了解したことになっているが、社交辞令にすぎない。イランは、日本政府が本気で、イランのために尽力するかどうか見ている。

 読売社説(12/28)は、緊張が続く中東海域に、日本船舶が通航しているから、「日本が中東地域の安定に主体的にかかわるのは当然である」と立派なことを書くが、では、いったい何をするのか。対イラン問題を悪化させた米国を説得するのか。はたまた、日本政府の二股武士ぶりが突かれて、事件が発生した場合、民間船舶からの救難要請があればどうするのか?

 力もなく、努力する気もなく、中身のない形式だけ整える日本的外交はまことに危険千番である。