筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
11月上旬にようやく、中国の日本産水産物輸入停止が解けて再開したばかりでまた輸入停止へ逆戻り。高市氏の、いわゆる存立危機事態発言に対する中国の反応は厳しい。日本側は、中国の大阪総領事のX投稿に対して尖っているが、中国の反応はそんな程度ではすまない。
集団的自衛権や、存立危機事態について国会で論争になったのは過去の話だが、高市氏のように軽薄な発言が出ると、やはり本音というかボロが出た。だから執拗に異議を唱えてきたのである。
従来、台湾有事の明示を避けてきたのは、外交戦略として意図的にあいまいにしてきた。鷹を気取った御仁がチャラチャラ答弁してしまった。国内では、まあ、それですむとしても、ことは外交の大問題であって、中国が強硬過ぎるのけしからんのと言う前に、事態の重大性を押さえておかねばならない。
台湾問題は、中国が派手なデモンストレーションを繰り返しているが、台湾のみならず中国もアメリカも、現状維持を基本としている。事実、つい先日のトランプ・習近平会談でも話題にすらしなかった。いわば棚上げして、わざわざ論争を引き起こさない大人の外交である。
そもそも存立危機事態とは日本が決定するのである。かりに米中が何かをやっても自動的に日本の存立危機とはならない。日米同盟は日本とアメリカの間に締結されたもので、台湾と結ばれたものではない。
アメリカにしても、中国・台湾間になんらかの衝突が発生した場合、間髪入れず自動的に介入するわけがない。まして、アメリカが台湾危機=アメリカ危機だと考えてはいない。アメリカにとって台湾は外交上の駒である。
一言でいえば、高市発言は、台湾問題に関して関係国が冷静に、かつ暗黙的に現状維持を支えているのに、突然、飛び出して喚いたのと同じである。
軍事力は抑止を最大の目的にしているが、持っているものは使うべしとばかり、先走った。大国に対しては所詮小国に過ぎない日本が、もっとも頼るべきは外交力である。外交力は、相手側に信頼されてこそ発揮できる。
トランプの面前で飛んだり跳ねたりするような人物を見て、アメリカと対立する中国が愉快なわけがない。
高市氏は考え違いしているのではないか。アメリカの軍事力は日本の軍事力ではない。アメリカの軍事力を鼻先にぶら下げて、東アジアで大きな顔をすればするほど日本は孤立する。どこまでも、自立した国でなければならない。
本当の鷹はピーチクバーチクしないものだ。
