論 考

民主主義の破壊者

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 「ノーベル賞をよこせ」と恥も外聞もなく騒ぎ立てるトランプを見ていると、理屈抜きに嫌悪感や、侮蔑意識が沸いてしまう。

 ノーベルの遺言によれば、「諸国間の友好を最も促進した人物」を顕彰することになっている。トランプもそれを知っているらしく、戦争を止めたと喧伝これ努めているわけだが、実際、世界中の人々の目に映っているのは、裏付けもなくする放言や、事態をかき回しているとしか見えないだろう。

 しかも、WHOから脱退、パリ協定から脱退して、世界各国の協力体制を妨害したり、身勝手な関税をふっかけて世界貿易を混乱させているのだから、とてもじゃないが友好促進の人士とは言えない。

 イスラエルの行動を止めさせるどころか、イスラエルを全面的に支持しているからネタニヤフの暴走には限りがない。ガザからパレスチナ人を追い出して桃源郷をつくるなどと吹いて、ネタニヤフにネジを巻くような始末だ。

 ウクライナ戦争を即刻停止させると大ぼら吹いて、信頼しているはずのプーチンにうっちゃられた。いまごろ、プーチンを罵ったところで、自分がまいたタネの責任は取れない。

 ところでノーベル賞委員会は、きわめて自立堅固であり、半端な情実や打算が入る余地はないとされる。だからトランプ的ロビー活動は逆効果だというのが、もっぱらの見方である。

 なぜ、かくもトランプはバカ騒ぎするのか?

 彼の狙いは、力とカネによる覇権を認めない、いわゆるウォーク的なるもの、民主主義や人間の尊厳なるもの、理性的・理知的なるもの――などの権威をコケにすることに燃えているのであろう。すでにアメリカ国内は自家薬籠中の物である。われこそ世界の王者だという鼻息が聞こえてくる。

 彼の発言挙動の一切合切を、マンガ的と冷笑する時期はすでに昔だ。アメリカだけではない。世界中の民主主義者がトランプ的なるものと戦わねばならないわけだ。