論 考

錯乱トランプ関税に反発の動き

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 なんといっても、錯乱状態としか見えないトランプの行動を牽制するのはアメリカの人々が大事だ。関税発効の一部を90日間延長したのも、いわば足元の問題が大きいことを示唆している。

 FRBパウエル議長の発言は、表面は冷静沈着だが、明確にトランプの関税政策などに異議を表明した。いわく、

 「トランプ関税などは現代史に類例がなく、FRBを未知の領域に追い込むものだ。」

 「FRBは、完全雇用の促進、インフレ抑制を責務とするが、トランプ関税などはその両方を脅かしている。」

 「経済成長減速とインフレ加速を一挙に招く可能性がある。」

 この発言は、利下げでホワイトハウスを助けることはしない、と宣言したのと同じだという観測もある。

 カルフォルニア州は、トランプの一連の関税措置について、「大統領には、関税を課す権利がない」として、連邦裁判所へ提訴した。その理由は、

 「トランプに投票した一般市民が打撃を受け、一方、億万長者やトランプに寄付した金持ち連中が懐を肥やす。」

 「アメリカは、自由貿易主義から縁故資本主義に堕落した。」

 「大統領が関税発動の根拠を、国際緊急経済権限法IEEPAとしているが、同法を関税発動の根拠とするのは法律的に誤っている。その権限は議会にこそある。」

 ニューサム知事によれば、カルフォルニア州人口4000万人、アメリカGDPの14%を占める。独立国として考えれば世界5位の経済規模である。しかし、貿易減少で数十億ドルの収入減になる。黙ってみていられないという。

 報道によれば、中小企業や公民権団体が関税発動に対して提訴しているが、州ではカルフォルニアが初めてである。

 赤沢大臣が訪米して、関税交渉を開いた。今回は、相手(トランプ)が、何を求めているのか知るのが大きな目標であって、日本が何かを約束したというようなことではないだろうが、「関税が低ければ上等」という安直単純な思考にはまらないでほしい。

 トランプの性質からして、いつ、何を言い出すかわからない。しかし、ひたすらトランプの慰撫に努めるというような構えではまともな交渉になるまい。

 難しいことは重々承知しているつもりだが、名を捨ててでも実が取れればいいというような性根でやるべきではない。最低限、筋が通った交渉にするかどうか。自由貿易や、国際協調を標榜してきたのは、お体裁ではなかったはずである。

 アメリカ内外のトランプ包囲網形成という心構えで臨んでもらいたい。