論 考

戦争中毒

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 18日、イスラエル軍がガザ空爆を再開した。パレスチナの人が404人死亡、560人以上が負傷したという。

 ネタニヤフは、「戦闘を全面的に再開した」「交渉は戦火の下でのみ続けられる」「これは始まりに過ぎない」と全面的に強硬な発言をした。

 イスラエルの世論は、「人質解放のために協議を進めよ」が44%、戦闘再開を主張するのは9%に過ぎない。ネタニヤフが戦闘再開に踏み切ったのは、極右の声に依拠している。ネタニヤフ自身が、極右と本質的に変わらない。

 空爆再開は、事前にトランプに伝えていたというが、トランプがプーチンと電話会談する時期と重ねたような感じもある。

 1月19日に戦闘がほぼ収まり、ガザの人々の表情に明るさが戻ったのは事実だが、またまた谷底へ突き落した。

 そもそもネタニヤフはパレスチナとの和平に関心がない、イスラエルとパレスチナの和平は、二国家共存が当然であるが、ネタニヤフは絶対にパレスチナ国家を認めない。

 ネタニヤフの国内政治基盤は大きく揺らいでおり、裁判にもかけられている。戦争を続けている限り自身の立場が確保できる。思想的に、パレスチナを認めていないうえに、自分自身の権力維持が重なっているから、なにがなんでも理屈をつけて戦争を継続したい。

 和平ともなれば、ネタニヤフがおこなったジェノサイドの責任が追及されるのも避けがたい。世界のイスラエル支持の流れにも亀裂が発生している。

 極端な話、ネタニヤフが、やれるだけやってやろうと腹を決めているだろう。

 もっとも強固なイスラエル支持者のトランプが、パレスチナ人の苦悩を正面から考える可能性はない。

 ガザの構図は、ウクライナにも当てはまる。

 トランプはプーチンとの電話会談では、いわば、あしらわれた。こちらも、ウクライナの人々の苦悩は無視されている。

 プーチンが言うように、西側がロシアを追い込んだのが原因としても、ウクライナがそれをやったのではない。ウクライナが侵略された被害者であることは誰がみてもわかる。

 ところがトランプは、ロシアを交渉に引き出すためだとしても、ロシアが占領している領土をウクライナが回復するのも、安全保障としてのNATO加盟も否定している。なんのことはない、はじめから交渉のカードを捨てている。

 取引自慢のトランプが、その事実に気づかぬはずはないから、逆にいえば、トランプはウクライナを見捨てているとしか見えない。

 トランプが標榜する「力による平和」とはこういうものだ。力があるほうが力のないほうを従わせる。力こそがルールである。

 力信奉者による世界は、弱肉強食である。食べるものがなくなれば、食べるほうも生きられない。

 トランプや、プーチンや、ネタニヤフは、頭が戦争中毒である。率直にいえば平和の敵でしかない。平和を希求しない政治家が右往左往して、国連とその活動を妨害している。