週刊RO通信

トランプ的暴走はこれまでだ

NO.1603

 トランプが、「ウクライナ戦争を止める」と吠える。戦争を止めること自体は上等だ。いずれが勝とうが敗けようが、人間の命が失われるのは最悪であり、それに無感動になる人が増えるほど、世界は暗闇へと墜落する。だから、トランプは大嫌いだが、戦争を止めるのであれば評価する。

 ところで、ウクライナ戦争を止めるためには、ロシアが手を引かねばならない。手を引くについてはケジメをつけねばならない。いろいろ言い分があるにせよ、他国領土へ突然侵攻して暴れまわったのはロシアである。その始末をどのようにつけるのか。勝利の凱旋をしてもらってはよろしくない。

 さて、トランプ的停戦がいかなものか。領土を返せ、今後の安全を保障せよというウクライナの至極「当たり前」の要求を、トランプははねつけている。これでは、プーチンの勝利のために、トランプが助太刀する形だ。「弱きを挫き、強きを助く」では、歌舞伎的美学にはなりようもない。

 トランプは、ゼレンスキーをぼろくそに批判する。カードを持たずに交渉できるかと痛罵する。たしかにそうだ。2022年2月24日ロシアが侵攻したとき、終わったと考えた人は多い。しかし、ウクライナはロシアに敢然と立ち向かった。米欧はウクライナ支援に立ち上がらざるをえなかった。

 早い時点での停戦機会がなくはなかった。しかし、船頭多くして舟山に登るで、ずるずると戦争が続いてきた。トランプは、ゼレンスキーがアメリカのおカネをジャンジャン費消させた、と口角泡を飛ばしているが、いまやプーチンが狙っているのはアメリカとの交渉だ。

 トランプは、自分であればロシアをウクライナに侵攻させなかったと息巻く。それは仮定の話、現実に米国大統領としてウクライナ戦争を引き継いだのだから仕方がない。トランプに少々の歴史的知識? があれば、ウクライナの膨大な犠牲をなんとか助けたいと考えるはずである。

 それにしても、最近のトランプのゼレンスキーに対する罵倒は常軌を逸している。自分の思うようにならない時、幼児がところ構わずぎゃあぎゃあ泣き叫ぶのと変わらない。これで、冷徹なプーチンと対等の交渉ができるわけがない。すでにトランプは取引敗者だと言うべきだ。

 トランプは、自分だけが正しいと考えて行動するタイプである。不動産業者として、あくどい取引をしても法に引っ掛けられなかったからやってきたのだろう。ところが、なんの間違いか! 二度も米国大統領に就任した。平然と法律無視の発言をするのは長年の習い性の証明だ。

 刃物を持たせないほうが無難な人はいる。トランプは、権力を持たせてはならないタイプである。一期目はイデオロギーを同じくしても、トランプ的性情の危険性に気づいて、修正するべく努力したり、離反した人々が多かった。今回ははじめからオール茶坊主集団に君臨する王様だ。

 権力を握った。取り巻きは、言葉をYesしか知らない。トランプは偏執狂である。人間観は、敵と味方の二分法である。自分が気に入らない人は徹底的に排除する。しかも坊主憎けりゃ袈裟まで憎いのだから、切って切って切りまくる。有意の人材は、「そして、誰もいなくなった」へと向かう。

 ゼレンスキーは、トランプにすれば大嫌いなタイプである。堂々たる正論で世界を巻き込んできた。力とカネに物言わせる取引しかできない人間から見れば後光が差してまぶしい。だから、大いに目障りだ。力とカネこそが世界を牛耳ることを教えねばならない。

 戦争を始めたのはプーチンである。ところが、それをゼレンスキーだと罵る。ゼレンスキーは、トランプがプーチンの偽情報世界にいると語ったが、これは意識的に手加減したのだろう。なぜなら、トランプの存在の基盤自体が、偽情報、幻想、妄想のドタバタ鍋だからである。

 トランプは、破壊と建設の区別がつかない。なんでも更地にすれば新しい建物が出来上がると錯覚している。世界は、誰かが命令して建設されたのではない。あらゆる人々が知恵と力を結集して構築してきたのである。トランプは、世界の未来を構想するような頭脳を持っていない。地上げと貸しはがしで明るい未来を創られるわけがない。

 世界には真っ当な人がたくさんおられる。持ちこたえて、逆襲すべしだ。