筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
米国はルビオ国務長官、ウォルツ大統領補佐官、ウィトコフ中東担当特使、ロシアはラブロフ外相、ウシャコフ大統領補佐官によるウクライナ戦争停戦会談がサウジアラビヤのリヤドで開催された。
ルビオ氏によると、両者は4つの合意をした。①両国首都の大使館機能の回復。②全当事者が受け入れられる形でできるだけ早期に戦闘を終わらせる作業を開始すべく、それぞれが高官チームを任命。③ウクライナの和平継続が米ロにもたらす可能性がある地政学的・経済的な協力についての協議の開始。④今日の会議に関する全員による協議の生産的な進展への努力。
ルビオ氏は、「ロシアが真剣なプロセスを始める意思があることを確認した」、ラブロフ氏は、「米国が我々の立場をより理解するようになった」と発言した。厳密にみれば両者の理解がすれ違っているのではないだろうか。
ウクライナと、欧州は今回蚊帳の外であって、米国、欧州、ウクライナのそれぞれの思惑がバラバラになっているように見える。欧州の大雑把な立ち位置は、①ウクライナは孤独ではない。②トランプに対して、欧州がやること(防衛費増額、ウクライナ支援など)を示す。③欧州はプーチンと戦う、などである。
欧州が、なにをやるか? トランプが暴走した場合、欧州単独でウクライナを支えるのか? いろいろ疑問が沸くが、目下は事態の推移に合わせて欧州の結束を固めようという流れだ。
トランプがウクライナや欧州の立場を忖度して行動する可能性は低い。極端にいえば、戦争を止めさせるという一点だけだ。
それは、可能だ。なぜなら、もともと戦争を始めたのはプーチンなのだから、プーチンが撤収すれば、それて終わりである。
問題は、占領している領土をお返ししますとは言わないだろうし、ウクライナがNATOに加盟することももちろん反対だ。トランプの決め球は、プーチンに対しては何もない。
プーチンがいちばん喜ぶ、国際舞台への復帰は、トランプの一存では無理だ。なにしろウクライナ戦争ではプーチンはやりすぎている。なぜ、国境を越えて軍隊を派遣したのか。世界中の国が、なるほど、わかったというような総括説明が可能ではないからだ。
力による平和という表現があるが、トランプとプーチンの談合だけでウクライナを侵略した罪が消えるわけがないし、それをやったならば、米国中心の普遍的価値観による世界秩序などたわごとでしかない。
トランプができるのは、たった一つ、これ以上人命損失をなくそうということだけである。
もちろん、ウクライナがそれを望んでいるのは当然だが、欧米のパックアップがあったらにせよ、国民が命を懸けて戦争してきたのはウクライナである。
それが普遍的価値観、民主主義の橋頭保だとしてきたのである。大統領が変わったからといって、トランプとプーチンの人間関係が、それに置き換えられるようなものではない。
そればかかりではない。どうやらというべきか、やはりと言うべきか。トランプが民主主義を後生大事にするだろうと期待する人は圧倒的に少ない。
下手をすれば、力があるとはいえ、世界を牛耳っているのが21世紀の帝国主義者、いや、もっと露骨にいえばアウトロー的思想の連中だということになってしまえば、世界の先行きはまったく危険だ。
貿易問題などでもトランプの評価は悪化している。なにに躓いてレームダックになるか。それこそ神のみが知る。はっきりしていることは、神なるものがトランプを世界救済のために遣わしたのではないということだけだ。
