筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
パレスチナとイスラエルの42日間の和平段階が、1月19日発動されるというニュースには大きな期待を持った。しかし、不安は尽きない。
ハマスによる2023年10月7日のイスラエル攻撃が発火点となり、以来、イスラエルのガザ攻撃が熾烈を極めている。同年11月24日から12月1日まで休戦があったが、和平への流れにはならなかった。
むしろ、休戦や停戦の機運が高まるたびに、イスラエルの攻撃が激しくなるような感じだ。今回も1月15日夜に停戦が発表されたが、数時間後からイスラエルはガザを激しく攻撃した。現時点で83人が死亡したと報じられている。
イスラエルの国家安全保障相グヴィルは、極右政党ユダヤの力を率いている。彼は、連立から離脱はしないが、大臣を辞任すると発表した。理由は、「まとまりつつある合意が無謀であり」「今までの軍事的成果を消し去るものだ」という。
この発言は、ネタニヤフが公言している、ハマス撲滅が成功していないからである。国内的には対ハマス攻撃が成功していると喧伝しているが、撲滅ではない。それに、ネタニヤフは戦争をしているから権力の座にいられる、と考えている可能性を否定できない。
ハマスはどう見ているか。
ハマスの目標は、ヨルダン川西岸などからイスラエルの入植を阻止する、パレスチナ国家を承認させる、イスラエルの囚われている人々全員を解放する、イスラエルによるガザ包囲を終結させる、などである。
ハマスは2023年10月7日イスラエルを攻撃して、約1200人を殺害し、251人の人質を取った。これは、ハマスにすれば大戦果であった。とりわけ国際的に関心が薄くなっていたパレスチナ問題を大きく浮上させたからである。
しかし、それに対するイスラエルの報復は、おそらくハマスの予想外の激烈なものであったろう。パレスチナ市民46000人が殺害された。(実際はもっと多いといわれている。)
イスラエルは、ハマスのメンバーを狙っているというが、無差別大量殺戮が世界中から大きな批判を浴びている。国際刑事機構によって、ネタニヤフは犯罪者とされ逮捕を要請されている。
イスラエルはガザ攻撃と並行して入植活動を活発化させた。さらにネタニヤフは、パレスチナ国家の承認など歯牙にもかけない発言を続けている。
こうしてみると、ハマスの目的は達成されていないどころか、パレスチナが存亡の危機に追い込まれたように思える。
ところが、ハマスは「勝利」だと断言する。客観的には容易に理解できないが、イスラエルの強大な軍事力をもってしても、ハマスやパレスチナの人々の意思を打ち砕くことはできなかった。抗議運動はこれからも燃え上がると確信しているからだ。
肉を斬らせて骨を斬る。あるいは、最後の一人まで降参しなかったら、敗北ではない。かつて、一億玉砕を叫んだ日本の戦争思想に似ているようでもある。ただし、それは理屈に過ぎず、合理的ではなかろう。
建国以来イスラエルが、パレスチナの地に自国の拡大を追求してきたのは、そもそもパレスチナの人々の人権、国家を認めない意志が継続している。これは植民地主義であり、侵略戦争である。
パレスチナは、国家としての承認、独立を要求している。イスラエルがそれを認める気がないから、パレスチナの人々が屈服しないかぎり戦争は継続する。
すでに79年年、パレスチナの人々にすれば不当な要求ではないのだから、要求を断念することは、イスラエルに敗北する以前に、自分自身に敗北することである。誇り高い人々としては論外である。
ハマスは、テロ集団扱いされているが、客観的に見ても、その活動は独立運動である。侵略に対する防衛である。力の差は歴然だ。いままでも、絶対的に不利な力関係において戦ってきた。今回、イスラエルの攻撃が予想以上に過激であったが、にもかかわらず、苦しみながらもパレスチナの人々は耐えてきた。
ハマスが勝利だというのは、これであろう。
トランプが、就任式に間に合うように! イスラエルにも圧力をかけたであろう。しかし、華やかな大統領就任式に花を添えることではない。自己本位以外何者でもないトランプが鼻をピクピクさせるのは勝手だ。しかし、パレスチナの人々の苦悩を理解せず、イスラエル支持を唱え続けるかぎり、アメリカもイスラエルと同じである。
MAGAを振り回すのも勝手だ。しかし、ものごとを公平公正に見られないような人間が大統領の座にある国が、世界秩序を安定的に構築するというのは論理矛盾も甚だしい。
パレスチナの人々の負けない精神は、敗戦前の日本の一億玉砕論とは異なって侵略された側の正義である。
怨念の歴史を停止させる努力をするのは世界中の国と人々の義務である。
