筆者 江怒川小難(えどがわ・こなん)
ある日、小難はちょっとした記事を見つけた。
記事によれば、兵庫県の百条委員会が10月25日に開催されたが、これは、秘密会として開催された。この会を秘密会にするように求めたのは、なんと斎藤県知事だった。この記事は特に注目されたニュースではない。
しかし、小難には、直感がひらめいた。
10月25日の百条委員会といえば、元副知事が尋問され、不規則発言をして、委員長に発言を止められていた。それだけではない。不規則発言を委員長に制止されている様子の録音データが、何者かによって外部に持ち出されていた。
そこで、小難は毛利に話しかける。
小難「毛利のおじさん。変な記事を見つけたよ」
毛利「何を見つけたんだ」
小難「10月25日の兵庫県の百条委員が秘密会だったんだよ。秘密会にするように要請したのは、斎藤知事さんだったんだ」
毛利「ちっとも変なことはない。10月25日は兵庫県知事選の告示の直前だぞ。百条委員会での発言が、斎藤知事側に不利益になったら、スタートからいきなりまずいだろ。秘密会にするように要請するのはあたりまえだろう」
小難「でもね、尋問された元副知事さんの不規則発言の録音がインターネットで世間に出てしまったんだよ」
毛利「そんなの偶然だろ。たまたまそういう録音が流出しただけなんだよ」
小難「偶然かなあ。仮にね、真犯人が犯沢さんだとすると、犯沢さんは、こういえばいいんだよ。本人が言わなくても、間に人を入れて信じやすくすればいいよ」
小難「斎藤知事には、『百条委員会で、選挙に影響を与える不利な発言が出るかもしれないから、秘密会にした方がいいですよ』と言うんだ」
小難「それからね。元副知事さんには、『このままだと悪いのはあなただけになってしまいますよ。ホントは元県民局長が悪いことをしているんだから、そこをしゃべっておいた方がいいですよ。そうしないと、あなただけが悪者にされたまま、百条委員会が終わってしまいますよ』とね」
小難「最後にね、百条委員会の秘密会に出席できる人に、『秘密会の録音が欲しいな。どっちにしても選挙が終わったら公開されるんだから』とでも言っておけばいいんじゃない。この人物が、百条委員会に不信感があったり、斎藤知事側を応援している人なら協力してくれる可能性は大きいよ。これで完全犯罪の成立さ」
毛利「何が完全犯罪だ。10円拾って交番に届けないようなセコい完全犯罪だな。それに、居酒屋の噂話を集めて作ったよりも証拠のない妄想みたいな推理だぞ」
小難「セコい完全犯罪なんかじゃないよ。百条委員会から持ち出された録音によって、『百条委員会などで、何かを隠そうとしている』とか『何か大きな力が働いているんじゃないか』という噂がネット上でどんどん拡散されていき、選挙戦に大きな影響を与えたんだから」
毛利「どっちにしても証拠がない。妄想みたいな推理はやめろ」
小難「だからね、杉下右京さんに兵庫に出張してもらってよ」
毛利「番組が違うだろ。それに、もう俺にそんな権限はない」
小難「じゃあさ、科捜研のお姉さんに録音データの分析を頼んでよ」
毛利「それも番組が違うだろ。それに、科捜研は京都府警だ。非番の時にボランティアで分析したにしても、京都府警の機材を私用で使ったことになり、今の時代、ただじゃ済まんかもしれんぞ」
小難「くっそー。平次に電話しようっと」
小難「平次か? 兵庫は悪い奴がちっとも捕まらないじゃないか。何とかしろ」
服部「ワイの管轄は大阪府警や。兵庫は管轄外じゃ。それに兵庫県警のトップは兵庫県知事やぞ。捕まるかい」
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今回は、実報道もネット上にも公開されてない小難の推理であるが、ついに毛利のおっちゃんを眠らすことができなかった。証拠のない小難劇場の後編はあるのか?
