トランプ氏の側近、知恵袋と見られていたボルトン前大統領補佐官が政権を去って、近々内幕ものを出版する。
最大の関心は、トランプ氏が軍事支援を取引材料として、政敵バイデン氏の調査をウクライナ大統領のゼレンスキー氏に迫った件である。
弾劾調査における資料として、民主党は証拠を確保しているというが、ボルトン氏の証言があれば、さらに動かぬ証拠のダメ押しになる。
弾劾裁判自体は、トランプ氏擁護の共和党が上院を制しているし、その体制が内部から崩れることはないとみられるから、トランプ氏有罪判決には至らないという見通しである。
ただし、弾劾裁判で無理が通れば道理が引っ込むという形だと、国民が認識すれば、トランプ氏が2期目の大統領をめざすには大きな障害になる。
対立候補を立てるべき民主党は、まだ、ダントツの候補者の目途が立たない。いわば敵失対敵失の混沌状態である。
名著『アメリカの民主主義』で、A・トクヴィル(1805~1859)はアメリカ人の独特のコミュニティ意識を主張しているが、極端に敵対関係が確立している事情において、国民各人がいかなる判断を下すのか。
トランプ氏の支持率は固いといっても過半数には及ばない。今度の大統領選も極めて微妙な情勢にある、とわたしは見ている。
アメリカ第一主義と多国主義は、明確に異なる観念であるが、1人ひとりが何をもって理性的だと考えるか。弾劾裁判の過程が今後どのように展開するか。目下は膠着状態みたいであるが、目が離せない。