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インボイス制度は大増税の隠れ蓑?

おかぼん

 インボイス制度が10月1日から開始される。これは消費税の制度改革という仮面をかぶった令和の大増税である。一般労働者に取ってみれば、益税で稼いでいた業者がなくなるので結構なことだと思われるかもしれないが、とんでもない話である。

 そもそも免税事業者は課税売上が1,000万円以下でなければならない。免税事業者といっても企業の従業員として採用されず、やむを得ず企業から仕事を請け負うフリーターなども多く含まれ、免税事業者の数は法人も含めて約424万人といわれる。

 買い手側の企業は、9月30日まではこれらフリーターから請求される金額に含まれる消費税額分を仕入控除することができる。しかし、10月1日からはフリーターが免税事業者である限りそれができないので、その分が増税になるわけである。逆にフリーターが課税事業者になった場合は、売上から仕入を引いた所得に含まれる消費税分が増税になる。国にしてみればいずれにしても税収が増える仕組みになっている。それにしても、この制度が軽減税率制度とセットで導入されたというから皮肉な話である。

 本来は消費税導入時に免税事業者など設けず、事業者すべてを課税事業者にしておけばよかったのであるが、国民の猛烈な反対に直面してそれができなかった。ようやくあるべき姿になると言えなくもないが、導入されて34年も経つと事情は複雑である。消費税導入当時は益税であっても、時とともにそれを予め収入と見込んで契約金額を決定するようになる。つまり、売り手の免税事業者は税込金額を収入と予定し、買い手の課税事業者は税抜金額を仕入と予定してしまうのである。益税は免税事業者、課税事業者関係なく得ていると言える。

 インボイス制度ではこの益税の負担をどちらがかぶるかという問題になってくる。力関係から考えると大半は免税事業者がかぶることになるだろうが、国はインボイス制度を表向き増税とは捉えておらず、あくまで制度の問題としている。もっとも結果として増税になることは承知しているので、激変緩和措置がいくつも設けられており、真綿で首を絞めるように数年かけて完成させるようである。ちなみに、この制度で影響を受けないのは、売上の対象者が一般消費者のみの一部の免税事業者のみである。

 今後、国は制度改革に名を借りたこのような新手の隠れた増税を仕掛けてくる可能性がある。われわれはしっかりそれを見極める目とそれに対処できる力を養っていかなければならない。


 おかぼん ライフビジョン学会会員