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会社は就業時間外時間に介入するな

おかぼん

 日本経済新聞のやさしい経済学に「副業時代を考える」という連載があった。このように副業が注目されるようになったのは、「働き方改革」で、副業が容認されたからであり、厚生労働省の「モデル就業規則」も事前に届け出ることにより「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」と変更された。

 以前は順守事項として「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」とあった。許可から届出になったのが大きな変更だが、そうは言っても「労務提供上の支障がある場合」など4条件に該当する場合はNGである。この4条件は過去の判例に基づくものである。

 そもそも労働者が就業時間外に何をやろうと自由であって、それを会社がとやかく言えるものではない。「労務提供上の支障がある場合」は禁止というが、遊びであればOKと言えるのだろうか。前夜の飲み過ぎによる二日酔い、夜更かしによる明らかな睡眠不足、健全な例でもフルマラソンを走った翌日など、労務提供上に全く影響がないと言えば嘘になる。

 要は程度の問題であって、それを規則で縛り付けるというのはおかしい。今でも相当数の兼業農家があり農繁期には多くの労働者が農作業に従事しているはずである。私は都会で生まれ育ったが、実家が零細な小売商だったので、サラリーマンの父も店の帳簿を付けていた。給料をもらっているいないにかかわらず、どちらも間違いなく副業である。

 しかし、そういった昔からの家庭の事情による副業、あるいは経済上やむを得ない副業のほかに、スキルの活用や向上を目的とするものや新たなキャリアとして転職や開業を目的とするものがあるのも事実である。会社にとって転職や開業を目的に副業されたのではたまったものではないが、スキルの活用や向上が目的で、それが今後本業に活かされるなら大いに歓迎されるべきである。

 そもそも今の日本では、労働者のスキルの活用や向上を目的とした教育システムが極めて貧弱である。そのため、意識の高い労働者が受講しようとしても、時間的経済的な制約が大きい。幸い「働き方改革」によって、今後所定外の勤務時間が減少することは間違いない。そのような状況で、働いて収入を得ながらスキルの活用や向上もできるとしたら、願ったり叶ったりであろう。

 副業を原則認めている企業は2018年で225%と、まだまだ少ない。意識改革が進み今後増加することを期待したい。