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目のつけどころが違うでしょ

おかぼん

 日経平均株価は、9月29日終値で31,857円62銭と少し値を下げたとは言え、今年1月と比較すると20%以上上昇している。これが適正水準かどうかはさておき、日銀が発表した本年4~6月期の資金循環統計によると、本年6月末時点の家計の金融資産は前年同期比4.6%増の2,115兆円となった。今春以降の株価上昇が資産を押し上げたという。

 日本の人口は1億2,455万なので、1人当たりの平均金融資産は1,700万円となる。しかしその中央値はせいぜい500万円である。貯蓄ゼロ世帯が2、30%もいるという実態からすると、これだけでも国民が2極化している実態が見て取れる。

 ところで、株価の上昇に比べて金融資産全体の伸びがこの程度に低いということは、株式を保有している国民とそうでない国民の間で金融資産の差が広がったということを示している。4.6%増というのは平均であるから、昨今の物価上昇を考慮すると、株式を保有していない国民の多くの実質金融資産はむしろ減っているが予想される。

 確定拠出年金の実態を見てみると、意識の高い個人型でも預貯金が一定の割合を占めており、企業型においては30%近くを預貯金が占めている。政府は長い間「貯蓄から投資へ」と言うスローガンを掲げてきているのにもかかわらず相変わらずである。2024年から新NISAが開始されるが、しっかりと国民に周知しないとますます2極化を拡大するだけになりかねない。

 貯蓄から少し話はそれるが、10月1日からふるさと納税制度が一部変更され、返礼品期待の国民からすれば実質負担増になるという。なるほどふるさと納税は国民等しく誰でもできる制度ではあるが、返礼品を期待してその恩恵を受ける国民は、所得税を納めている国民である。給与所得者だけに限ってみても源泉徴収により所得税を納税している者の割合は80%に届かない。一定数の国民にはふるさと納税の返礼品など全く関係のないことである。

 結局のところいろいろ制度改革をやっても、国民等しく職に就き、一定の所得を得て、税金を納め、それなりの貯蓄ができるということが普通である社会でないと、その効果が偏り一層2極化に拍車をかけるだけである。
 「貯蓄から投資へ」も大切であるが、その前にその蚊帳の外にいる国民にもっと目を向けるべきではないであろうか。