月刊ライフビジョン | off Duty

終の住処の仕舞い方

曽野緋暮子

 子ども達が遠くで生活をしていて、将来帰ってくることが考えられない我が家では、数年前から墓仕舞いをしなくてはと言い続けていたが、夫は「自分がいるから大丈夫。いざと言う時には誰かが何とかするさ。」とまるで他人事。自分の年齢を考えて、いつどうなるかわからないと言う危機感が全くない。

 納骨堂、樹木墓等々の情報が多々あるが、納骨堂管理会社の破綻のニュースを聞いたり、檀那寺以外にお骨を移そうとすると莫大な離檀料を請求するお寺もあると聞くと、迷いが出て悶々としていた。

 ところが、今年2月初旬に檀那寺から納骨堂を造ったので説明会を開くと連絡があった。説明会に申し込むと田舎にも拘わらず約150名の申し込みがあり、3回に分けて説明会をするとのこと。

 2月中旬、夫と説明会に出かけた。住職の説明後の質問タイムで後見人らしき弁護士だと名乗って質問する人が2人いた。こんな田舎でも弁護士登場とは、時代を感じた。

 その後、納骨堂に移動し、実際に納骨壇を見ながら説明を受けた。冷暖房完備の立派な納骨堂でご先祖様もお墓より居心地が良いだろうと思う。

 納骨壇の使用は永久ではなく、使用期間が最長50年と言われたが、50年後なんて知らないっ!てことにしよう(笑)。納骨壇は1霊から12霊まで各種大きさが異なり、価格も40万円~250万円と幅があり、プラス年間管理料6,000円が必要だ。先祖代々の供養となるとある程度の大きさが必要。昔は土葬だったので骨壺がない。その場合は土葬をしている墓の下の土を小さな骨壺に入れて祀るそうだ。

 檀那寺のすることだからか夫もすっかり乗り気になったようで、すぐに申込書を提出したが、申込者が多いので抽選会をするとハガキが来た。3月中旬に抽選会があり、その場で希望の納骨壇が確保できた。後日、契約書提出と同時に50年間の使用料、管理料を口座一括振り込みした。我が家にとっては大きな出費だが、自分達が判断できる今、借金しないで払える今、片付けておけば、子ども達に迷惑をかけなくて済むと思い切った。

 その後、寺紹介の石材店に、墓仕舞いで私達がやらなければいけないこととスケジュールを具体的にレクチャーしてもらった。

 寺と石材店、我が家の日程を調整し7月上旬墓地で閉眼供養をした。ゲリラ豪雨が降ったり止んだりの天気だったが、最近は礼服を着なくても普通の服装で良いと言われていたので助かった。1週間後、墓石撤去と骨壺の取り出しをした。更地にしたが、草が生えると周辺の墓の迷惑になるので草の生えない土を入れてもらった。墓石は石材店が持ち帰って、墓石を供養してくれる寺に持ち込んでくれると言う。骨壺は石材店が持ち帰り約3週間乾燥させて、納骨堂に納められるように布袋に入れてくれるそうだ。

 8月上旬、納骨堂に無事納骨完了。住職にお骨を我が家の納骨壇に納めてもらい、読経を聴いていると感慨ぎ深まる。墓仕舞いが済んだ今年のお盆は酷暑の中、草刈、草取りや水を運ぶこともなく、納骨堂に行くだけで終わった。これで毎月の墓掃除、墓地の草取りから解放された。高齢者には楽だなあ!

 私は墓仕舞いで永代供養が終わったものと思っていたが、檀那寺の説明によると永代供養は位牌をお寺に移して仏壇仕舞いをすることだと言われた。別に約150万円かかるらしい。「えっ!」と思ったが、中途半端では何のために墓仕舞いしたかわからないので、こちらも何とか年内に終わらせよう。できる時にできることをやっておこう。