月刊ライフビジョン | off Duty

くじゅう連山4年ぶりに達成

曽野緋暮子

 2019年末、春になったらミヤマキリシマを見に行こうと山歩き仲間で盛り上がった。くじゅう連山の麓の法華院温泉の宿が確保できるかどうかがポイントなのでリーダーが申し込み、解禁日に電話を400回コールしてやっと予約ができた。

 シーズンにも関わらず他の宿の予約もでき、3泊4日の「ミヤマキリシマを楽しむ会」の計画ができあがった。ところが、2020年になるとコロナ感染拡大で頓挫。それから毎年、話が出るものの見送りとなっていた。

 コロナ感染症の扱いがインフルエンザ相当になった今春、「ミヤマキリシマを楽しむ会」の計画が復活した。リーダーが法華院温泉の宿確保に動いた。今回は電話100回コールで予約ができた。高齢者にとっての3年間ブランクは大きい。メンバーに次々と膝、腰の不調が出る。しかし、この先は体力が落ちる一方なのだから、その気になっている今行かなきゃ! ということで6月初旬出発を目標に筋トレ等の自主訓練と月数回集まって近場の山歩きをして計画実行に備えた。梅雨入りしたばかりの6月8日出発。雨の中を歩くことを前提として、荷物は可能な限りコンパクトに、下着以外は数日着ることを考えて汗が乾きやすい物を用意した。

 初日、長者ヶ原登山口から法華院温泉まで約3時間。道は石がゴロゴロしてぬかるみが滑りそうで、足元ばかり見て歩いた。上下カッパを着ていてもずぶ濡れ感あり、しんどくて寒い! 白内障手術後で眼鏡なしで歩けたことはありがたかった。

 宿に着いた時はホッとしたが、寒い! 受付の順番を待つ間も寒い! 受付を済ませて濡れたカッパや靴を乾燥室に持ち込んだ。乾燥室があることがとてもありがたかった!

 部屋に荷物を入れて冷え切った体を温めるために温泉に直行。源泉かけ流しの温泉で石鹸類使用禁止だ。雨の中を歩いて身体が冷え切った人達で湯船はほぼ満杯。湯船に白い物がいっぱい浮かんでいる。こんなにいっぱいの「湯の華」体験初めてと思いつつ温まる。山小屋で温泉に入れるってありがたい! お風呂上りでは念のため持参した薄手のダウンジャケットを着てほっと一息。「夏山でも防寒着は必携だ。」を実感した。

 2日目、メンバーのハレ女&ハレ晴れ男のおかげで平治岳、北大船山、大船山に気持ちよく登れた。法華院温泉に2泊するので大きな荷物を置いて歩けたことが一層晴れ晴れとした気持ちにしてくれた。

 昨年から起きた尺取虫被害で大量の尺取虫にミヤマキリシマの新芽を食べられて全山ピンクのミヤマキリシマには出会えなかったが、山の上部にだけのミヤマキリシマでも初めて観る私には圧巻の光景だった。コロナがなかったら見られていただろうに残念!!! 尺取虫被害は久住山、由布岳でも同様だった。これは打つ手がない自然災害のひとつだろなあ。宿に着くと同時に飲んだ生ビールが美味しかった!

 3日目、すべての荷物を背負って久住山に向かう。天気が良いと重い荷物も余り苦にならない。しかし、次の宿のチェックイン時間もあるので時間短縮のため、頂上直下で貴重品と水以外をデポして山頂を往復した。荷物の少ない登山の何と楽なことか(笑)。予定時間より早めに湯布院着。10数年ぶりの湯布院の街がすっかり若者の街になっていて驚いた。この日は普通のホテル泊なので石鹸、シャンプー使い放題、久々にさっぱりした。

 最終日、雨は降っていないけれど怪しい天気。登山に必要な物だけをザックに入れて由布岳に向かう。霧と風の中、由布岳西峰と東峰の分岐に到着。私は以前西峰には登ったことがあるので東峰を希望したが、初めての人が何人かいたので鎖場のある西峰に行くことに。ここでも貴重品以外はデポすることに。

 岩場も鎖も濡れていて緊張感が高まる。頂上は霧で眺めがないが達成感あり。下山途中の切り立った岩場でリーダーから念のためザイルを使うと指示があった。ハーネスの使い方を教わり、トップバッターでザイルを使いながら降りた。この年齢でテレビしか見たことがない初体験することにワクワクした。…

 私にとってハードな4日間で筋肉痛はないものの気怠い数日を過ごした。でも今は、次回はどこに行こうかなという気持ちが湧いてきた。「だって先が短いンだから。」


            ※デポとは登山等で荷物を途中の地点に一時置いておくこと。