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チャットGPTの波紋、どこまで

おかぼん

 「ちゃっとじーぴーてぃー」と打つと「ChatGPT」と変換される時代がやってきた。

 改めて説明する必要もないが、ChatGPT(Chat Generative Pre-trained Transformer)は、OpenAIが2022年11月に公開した人工知能チャットポットのことで、原語のGenerative Pre-trained Transformerとは、「生成可能な事前学習済み変換器」という意味である。OpenAIのGPT-3ファミリーの大規模言語モデルを基に構築されており、教師あり学習と強化学習の両方の手法で転移学習されている。公開されてまだ半年程なので今後これがどうなるのか予測は難しいが、全ホワイトカラーの仕事に革命が起こると言われている。

 あいまいに短く聞いても適切な回答は返ってこないが、小論文の問題のように明確な課題に制約条件を付けて質問するとかなり適切な回答が返ってくる。一見して、それをそのまま使ってもそれなりに実用に耐えられるレベルである。もちろん、この回答が100%正しいという保証はどこにもない。また、著作権などの法令に触れることはないかなどの問題もある。しかし、それは我々が日常ネット検索を活用しているのと大きな変わりはない。最終チェックをしっかり人間が行いさえすれば問題はないと言える。

 ある企業では1~2日かけていた調査が何と1分になったというから驚きだ。3月に発表されたアメリカの論文では、GPTの普及で労働者の9割の業務に影響があり、そのうち2割は業務時間が半分になるという。今までは情報化の進展により、単純で定型的な業務が人間から機械に取って代わられてきた。しかし、今後はそれとは無縁と思われた参入障壁や賃金の高い職業、例えば調査研究者や記者、数学者などに影響が及ぶことが必至であるという。

 もちろん、影響がないと思われる職業も存在する。アスリート、調理師、飲食店の従業員、大工見習、タイヤ交換士などが挙げられているが、この中にホワイトカラーは存在しない。こうなると、もはや変化に対応するリスキリングでは間に合わず、革命に対応するリスキリングが必要である。どれほどの企業がこのリスキリングに取り組んでいけるだろうか。

 先月、米IBMはAIに置換可能な職種を将来的に採用停止するとの見通しを示した。人事などの間接部門を想定しているという。また、顧客と接する業務ではない同社の間接部門の従業員の30%(7800人)が今後5年間でAIと自動化によって取って代わられるという。

 アメリカの一企業の話ではない。日本も他人事ではない。大規模な配置転換や希望退職募集が予想される。組合は従業員をどう守っていくのか。長期にわたる大変な時代の到来である。


 おかぼん ライフビジョン学会会員