論 考

ポンチ絵的ドル売り介入

 24年ぶりのドル売り介入がおこなわれた。鈴木財務相は、「投機による過度な変動がくり返されれば見過ごせない」とコメントした。

 この言葉はなかなか含蓄がある。ポンチ絵的だ。

 まず、世界の金融市場はとっくにカジノと化している。いわば、投機というよりバクチ化しているというのが真っ当な識者の見方である。

 ところで、なぜ円安騒動になったか。2013年から、黒田日銀がインフレターゲット論をかざして、2年でインフレ2%達成、そのために国債をジャンジャン発行、国債買い入れも大盤振る舞いだ。その効果! が上がって円安になった。自分が撒いた種である。

 そもそも市場が望みたいことと経済の安定は同じではない。中央銀行が市場を思い通りに動かせると思うのも大間違いだ。このような正論を聞く耳持たずにやってきた。

 日銀の本来の仕事は金融システムの安定と物価安定である。金融システムの安定どころか、いわばバクチに打って出た。それが目下の円安・物価高だ。

 投機の見張り番たる中央銀行が、政府の意向を汲んで自らバクチをやったのだから、いまさら「見過ごせない」と語っても迫力がない。

 もちろん、政府日銀に打つ手がないのを投機筋はお見通しだ。残る手は1つ。お祈りしかない。