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賃上げの正義は労働側にあり

おかぼん

 昨年の米中貿易戦争最中の消費税増税、その前後に襲った台風による自然災害、そして今年に入っての新型コロナウイルスの蔓延、景気の先行きが非常に懸念される中での春闘は悲壮感すら漂うが、そんな春闘であっていいのであろうか。

 経営者は賃上げの要求をするごとに、景気の先行き不透明を理由に労働者の要求を拒んで来たが、その「先行き」が良い方に読み違っていたときでも、その鞘の埋め合わせをしたということは聞いたことがない。

 それどころか、昨年も過去最高益を上げながら中高年者に希望退職を募る企業があった。これを「先行実施」型リストラというらしいが、この企業に限らず業績の良い間に従業員の若返りを図ろうとする動きは盛んで規模、人数共に急拡大している。

 本来リストラは、業績不振で追い詰められた企業が、最後の手段としてやむを得ず打つ「禁じ手」である。最高益を上げるために懸命に働いてきた労働者を、歳を重ねたというだけで再教育の機会も与えず、一方的に切り捨てるというやり方は身勝手、ご都合主義と言わざるを得ない。

 その結果、企業には過去最大の内部留保が積もりに積もっている。私は過去に幾度かこれを、労働者に分配せよと訴えてきたが、またしても日本経済新聞が春闘を前にした2月19日(水)から3回にわたり、今度は経済教室で特集した。

 特集では、日本の労働分配率を下げている理由として5点挙げている。第1に「日本的雇用慣行の反省」から、正規雇用を減らし人件費を抑制したこと、第2に「失われた20年」を経て賃上げに慎重になったこと、第3に成果主義など賃金制度の改革を介して人件費が縮小したこと、第4に内部留保(利益剰余金)を増加させたこと、第5に現預金を増加させたことである。

 つまりは、正規雇用を減らし、賃上げを抑制し、成果主義と称して人件費を縮小することで、内部留保を現預金として貯めてきたということである。それに対して労組は、景気の先行きが見通せないから賃上げも我慢する、という態度ではなく、労働者の汗の結晶で貯めに貯めた内部留保を崩して賃上げを勝ち取り、それを成果に労使一丸となってこの国難に立ち向かうという労使共盛、Win Winの形で春闘を締めくくりたいものである。