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人口動態に見る死の傍証

おかぼん

 厚生労働省が発表した「2018年人口動態統計(概数)」によると、2018年の死亡者数は136万2482人で、前年より2万2085人増加し過去最高となった。出生数が91万8397人で、前年より2万7668人減少した結果、自然増減数は44万4085人減となり、12年連続で自然減が続いており、今後も長く続く気配である。

 死因順位は、1位の悪性新生物、2位の心疾患は前年同様だが、3位に老衰が浮上し、脳血管疾患は4位となった。もっとも老衰は男女差が大きく、男性の老衰は5位でその数は女性の3分の1である。

 1位の悪性新生物は全死亡の27.4%に当たり、およそ3.6人に1人が悪性新生物で死亡している。もっとも、がんも最近では早期発見と治療により必ずしも死に直結する病ではなくなり、5年生存率は前立腺がん、乳がんで90%を超え、大腸がん、胃がんで70%、肺がんで40%である。今後、がんの早期発見技術はますます進展することが期待され、喫煙率の低下と食生活の改善と相俟って悪性新生物の死亡率は漸減していくことであろう。

 ところで、死亡率としては低いものの、不慮の事故が4万1213人で6位に入っている。不慮の事故には大震災や豪雨災害も含まれるが、圧倒的に多いのは自宅での事故で、転倒や窒息などである。自宅のバリアフリー化をより一層進め、一人一人が気をつけることでかなり改善される死因である。因みに、不慮の事故の一つである交通事故の死亡者数は、一時期1万6千人を超えていたこともあったが、2018年は3万532人と、統計を取り始めた1948年以降の最低を更新した。

 また、自殺が10位に入っている。電車通勤を続けていると首都圏では毎日のように人身事故が発生しているが、一時期3万人を超えていた自殺者は最近漸減して2018年は2万32人となり、2019年は速報値ながら漸く2万人を割り込んだようでる。

 人生100年時代を迎えて、ただ肉体的な健康に留意するだけでなく、心の健康を心がけるとともに、周りの環境や自分の習慣を今一度見返して、不慮の事故に遭ったり、自殺に追い込まれたりすることのないようにしたいものである。