月刊ライフビジョン | off Duty

定年延長と非正規労働のシーソーについて

曽野緋暮子

 地方公務員だった近所のご主人は、定年と同時に市が管理する公園の管理人に採用された。この仕事は60才で定年になった人が2年間勤めては、次なる定年退職者に引き継ぐ慣例になっているそうだ。一般公募で簡単な試験があり所謂公務員の定年後の特権ではない。

 A公園は23万㎡の広さの中にイベント会場、自転車競技場、ローラースケート場、噴水広場等があり駐車場には約500台の車が止められる。花木、四季の花々が咲く花壇、芝生広場もある、かなり広い野外公園だ。もう一つのB公園は野球場、テニスコート、サッカーやキャンプ等ができる多目的広場を有する。この二つの公園をシルバー人材センターの人と一緒に1年交代で管理する。

 A公園の仕事はイベント会場やレンタル自転車、ローラースケートの借用手続き、メンテナンス、花木の剪定、花壇の植え替え、雑草の草刈等々。B公園ではスポーツ会場の借用手続き、備え付けの道具の管理、メンテナンス、雑草取り等々。夏は炎天下での作業、冬は寒風の中での力仕事なので真っ黒に日焼けして、今では精悍なガテン系になっている。

「春で辞めたら何されるんですか?」と聞いたところ「それが辞められないんだ」との返事。「今は60才になっても再雇用が当たり前になったので、後任がいないんだ。65才定年延長の話も出ているので僕もこの仕事、何時辞められるのかなあ~?」と苦笑されていた。確かにある議員の市政報告に「民間企業では65才まで働くことが一般的になっている。公務員も2019年度から段階的に」と書いてあった。働きたい人もいるのではと尋ねると、「昨年の夏が酷暑だったから、道具の管理と貸出手続きだけでなく、草取り、花木の剪定も仕事だと言うと皆、何も言わないで帰っていくんだ」とご主人。そうだょなあ、60才定年で勢いが残っていれば新たにハードな仕事にも取り組めると思うが、60才半ば以降からはキツいと思う。10数年前までは定年後にハローワークで剪定作業講座を受講後、シルバー人材センターに登録する人が多かったが、こちらも減っているようだ。

 定年後の人達を安い賃金で雇用して成り立っていた仕事は、今後どうなるのだろうか? 民間に丸投げするのか、それともボランティアと称して元気な年金暮らしの人達を使うのか?

 働き方改革とかで公務員、教師、大手企業等が時短を進め、定年を伸ばしていくことは本当に改革なのだろうか? 定年延長で非正規雇用の若者が増えるという雇用の構造変化ならば、私には改悪としか映らない。