月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

衆院選後もカオスは続く

司 高志

 先月本欄の記事はまだ幕開けだった。都知事の党とM進党は、まだまだ当分はカオスが続きそうである。

 その視点はズバリ、お金である。元都民Fの都議の一人によれば、上納金を月に21万円も納めていたらしい。特に否定の表明もないようであるから事実なのであろう。また、選挙用の写真で都知事と写ると3万円必要なのだとか。こうまでしてお金を集めるのか、というのが第一の感想だが、お金という視点で考えてみると、カオスの構図がまとまると思い至った。

 選挙前は、M進党代表と都知事の利害は一致していた。ただし、役者が一枚上手なのは都知事である。M進党に関しては一桁台の政党支持率で、復活の見込みはない。とりあえずは、沈みゆく泥船のM進党の議員を少しはましな船に乗り移らせようと、キッチリ条件交渉をしないまま、合流話を進めてしまった。M進党代表によれば、都知事側が、かなり強気な交渉に出たらしい。

 一方の都知事側はというと、真の狙いは100億とも150億とも言われるM進党がため込んだ政党交付金である。お金はほしいが、反乱を起こす議員や票の取れない議員はいらないというのが本音だが、M進党を丸呑みすると支持率がM進党並みに下がりかねない。大きなリスクである。しかし、M進党代表側は泥船から避難したい一心だから、交渉は都知事側が大いに有利に進んだであろう。

 この先は、M進党側は、代表一任の形で合流話が進む。M進党代表は、全員が合流できないことを知っていてだましたのか、希望的観測で夢物語を語ったのか。これまでの情報をつなぎ合わせれば、M進党代表の甘い読み、つまり切られる議員は少数との読みがあった。報道によれば、「全員が立候補できるように尽力する」との趣旨の発言があったようであるから、単に読みの力が足らないだけで、だますつもりはなかったのかもしれない。ところが、都知事側の「全員を受け入れるつもりはさらさらない」という排除発言が出て、混乱を極める。

 さてここからである。報道によれば、都知事の党に移るために、離党届を出したものには1500万円が手渡されることになる。このうち知事の党への上納金が700万円であったとされるから、知事の手元には約3億円のお金が集まったことになる。あとはどうやってM進党の政党交付金を都知事の党に移すかということだが、選挙後にM進党を丸呑みして、有り金全部をいただく算段だったのだろう。この交渉相手として先見の明がないM進党代表は、絶好のカモであったろう。都知事が、選挙について惨敗を認めながら代表を降りないのは、この3億円の管理と、そのうち入ってくる政党交付金の掌握が目当てではないかと推測している。

 筆者は一時、M進党代表は都知事にM進党の外科手術をさせるために、〝排除を予測しつつ何もしないでおく〟確信犯かと思っていた。だとすれば党を売り、政党交付金を貢ぎ、仲間をだました裏切り者である。謹慎蟄居してお沙汰を待つべきである。赤穂浪士も吉良を討ち取った後に、ペラペラしゃべったりしない。ところがM進党代表は、この事象を「想定内」と言ったという報道がある。筆者の考えは甘かった。M進党代表は確信犯ではなく、単に思慮の足りない愚か者だったのだ。

 M進党代表は、代表を降りるらしいから、今後は都知事の党にお金を貢ぐことができなくなった。果たして使い道のなくなったM進党代表は、都知事の党には入れるのか?

 もしかしたら入れてくれないかもしれないし、入れても雑巾がけか一兵卒ではなかろうか。それとも幹部をやらせるのか。この人が幹部では誰も言うことを聞かないだろう。

 顛末はキリストを裏切ったユダよりはましだが、この代表には反省という言葉はないのだろう。