くらす発見

雪よ、岩よ、われらが宿り

筆者 曽野緋暮子(そのひ・ぐらし)

 1月の山仲間の新年会で若手女子メンバーが「雪山に行きたい。」と言った。山男達は「おっ、良いね! 行こうやあ。」と盛り上がった。雪山は準備が大変だし、寒くなると手指、足指がすぐ霜焼けになる私は即座に「雪山には行かない。」宣言をした。

 その後具体的な話が出なかったが、2月の里山歩きで再び雪山の話が盛り上がった。山男達は「3月になれば残雪だから登山靴で大丈夫だよ。念のためにアイゼンを持って行けば大丈夫。」と言う。

 私が体験した雪山と言えば、秋の終わりに山に行き、頂上近くに積雪があったとか、急な天候の変化で雪に遭遇したという程度で最初から雪山を目指しての登山をしたことはない。

 気は進まないが、全く雪山に興味がない訳でもなく、行くとしたらこのメンバーで行くのが良いチャンスだとも思った。現役で時々参加するメンバーが参加すると言い、アイゼン、スパッツ、スノーバスケット、雪山用帽子、手袋等々準備し始めたので背中を押され、遂に参加することにした。

 雪山なので脚力をつけることが必要だが、同時に歩いている途中でスパッツやアイゼンを着けることになった時に手早く着けられることが大切だ。家の中に段ボールを敷いて何度か練習をした。

 3月2日に計画していたが天候が悪く、急遽3月3日に変更。そして、現地の状況が素人には無理との判断で3月9日に変更、行き先も少し近場の烏帽子山1225mに変更となった。

 当日、現地に着くと残雪どころか30cm超の新雪で完全な雪山。おまけに風雪だ。サングラスとアイゼンは不要とザックにしまい込んでスパッツを着け出発だ。先行しているグループの踏み後を辿ってリーダーが進む。と言ってもすぐに雪が覆う。途中で山男2名がスノーシューでラッセルしてくれることになり、その後を歩くが、時々ズボッと雪に足がハマってしまう。

 晴れていれば樹氷がキラキラしてきれいなのだろうが、風と雪で足元を見て歩くのが精一杯だ。普通の山歩きのようにお喋りが弾まない。休憩も立ったまま、水を飲むくらいで済ます。スキー手袋しているが手の指先が冷たくて、冷たくて凍傷になるのかしらと思うくらい辛かった。

 やっとの思いで頂上に着いた。道標は雪に埋もれ、風が強い。ザックの温度計はマイナス7度を指している。お弁当を広げるどころではない。立ったままジェリー飲料で小腹抑えをして下山する。

 途中の避難小屋で昼食だ。お湯を沸かしてカップラーメン、珈琲で暖まる。スイーツも美味しい! もう、下山するだけと思うと気持ちも軽くなる。でも、山の事故は下山時が多いので気を引き締め、注意深く下る。一度雪の中にズボッと入り込んで横に倒れたが、雪の上だったので打身もなく助かった。麓の管理センターの屋根が見えた時はホッとした。

 朝は開館していた管理センターが「天候不順のため閉館」と看板が出ていた。早めに下山して良かった。閉館と書いてあるもののトイレは使わせてくれたので助かった。また、お客さんが誰もいなかったので暖かい薪ストーブの近くで濡れたカッパ等を着替えさせてもくれた。とてもありがたかった。

 無事帰宅できたことで、いまさらながらの雪山初挑戦はとてもうれしい新たな体験として心に残った。今年は頑張っていろんな山に行ってみようという気持ちがムクムクと沸きあがってきた。