論 考

迷走、混沌、アメリカの内政外交

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 アメリカ連邦議会上院が、総額950億ドルの対外支援を可決した。内訳は、ウクライナ支援600億ドル、イスラエル支援140億ドル、ガザ含む人道支援100億ドルなどである。

 ただし確定したわけではない。下院共和党は審議阻止すると息巻いている。とくに共和党保守派は、メキシコ国境の不法移民対策強化を優先して取り組むよう画策している。

 ウクライナの前線はざっと1,000km、兵員・戦力いずれもロシアが優位である。総司令官のザルジニー氏が、シルスキー氏に交代したばかりだ。

 前線を視察したシルスキー総司令官は強大なストレス下にあるとコメントしている。この1年、戦線は膠着状態であるが、ウクライナが劣勢で守勢が思うように進まない。

 この時期に、支援予算が上院を通過したことはウクライナにとって朗報だ。しかし、ウクライナが主体的に情勢を転換するだけの力はない。

 イスラエルのラファ攻撃が非常に危惧されている。アメリカの対イスラエルメッセージの効能が出ない。ネタニヤフは、極論すればガザ戦争が続いているから首相の座にあるという実情から考えると、手負いの権力者である。

 はっきりしたことは、アメリカの内政外交は迷走、混沌している。11月の大統領選挙が健全な民主主義へ、人々を誘導する見込みがない。妙な表現になるが、唯一の期待は、トランプ有利が伝えられるなかで、民主主義のバネが活発化(反発)するかどうか。

 雰囲気の鍵は、高齢が問題視されている。当選したらプッツンでは困る。一方、トランプに対する警戒・批判が弱まってはいない。高齢も同様だ。バイデン応援団としては、年齢問題はご同様で、バイデン対トランプの対決が再現されることを期待しているが、それにしても高齢を問題にしつつ若い世代が民主・共和ともに台頭しないのはなぜか。

 アメリカ社会の競争の激烈さ、格差の固定化と、若い世代の元気のなさは同根ではなかろうか。これは、根深い病根である。

 民主主義の舵取りの最大のポイントは、自由と平等のあり方である。資本主義自体が平等を毛嫌いするなかで、平等を尊ぶのは、まさに1人ひとりの精神である。それこそが民主主義の核心である。

 アメリカは資本主義が栄えたことによって、平等精神を放り出してしまった。このままいけば、アメリカは崩壊へ踏み込む危険性がある。(実は、20世紀後半にこんにちの事態は予想されていた)

 なんども指摘するけれど、こんな危ない時代に、わが政治家人士は裏金商売である。話にならない。

 岸田氏の答弁など、ポンチ絵風に表現すれば、質問者が机をひっくり返したっておかしくはないくらい低質だ。

 「赤信号 みんなで渡れば こわくない」というのが、日本人的気風(文化)に思えて仕方がない。わたしは、こんなのは拒否する。