論 考

「派閥解消検討」も偽装でしょ?

筆者 高井潔司(たかい・きよし) 

 自民党の政治資金パーティをめぐる捜査が進む中で、19日岸田首相が自派の「岸田派」の解散を検討していると表明した。「検討」というだけなので、今後実際に実行するのかどうか、不明だからか、朝日、毎日、読売とも社説で取り上げていない。しかし、読売の見出しは「首相不信払拭へ判断」、朝日「苦渋の首相」から見て、首相の表明には賛成しているのだろう。岸田派だけでなく、他の派閥がどう対応していくのか、見極めがつかないのかもしれない。

 しかし、よくよく考えてみると変な話である。首相は先に政治資金パーティをめぐり派閥所属議員の裏金作り問題が明るみに出て、自派からの離脱を表明した。派閥から離脱した首相が、その派閥の解散を検討するというのはおかしくないだろうか。そんな疑問を呈すると、「高井さん、政治がわかってないね。派閥離脱なんで、そんなの建て前、形式に決まってるでしょう」という声が返ってきそうだ。いや私も形式的な言い逃れだと思います。

 だとすると、今回の「派閥解散検討」だって、形式的な言い逃れと言えるのではないか。悪く言えば「偽装」だ。そもそも首相は、検討すると言った数時間前までは、自派の政治資金規正法違反について単なる記載漏れと、何の反省も責任も感じていない他人事のような語っていた。主な幹部の機能不全に陥っている安倍派も解散の見通しと報じられているが、他の派閥は追随する見通しはないようだ。とすると、二派が解散しても、派閥の弊害などとても解消しそうにない。

 そもそも解散を検討している「派閥」とは何ですか? 派閥を解散するって、実際どういう行為なんでしょう? 政治資金規正法に基づいて届け出をしている「その他の政治団体」としてのグループを解散するという意味なのだろうか? 

 届け出を解消すれば、政治資金パーティは開けなくなるが、その団体は「岸田派」や「安倍派」としてではなく、「宏池政策研究会」だの「清和政策研究会」だのといった名称で届け出ているのだ。だからあらたに「公明正大政策研究会」でも設置して、新たに「政策集団」としてスタートしてもいいわけだ。「公明正大」では他党も似たような名称だし、明らかに「偽装」とわかってしまうから、適切な名称ではなさそうだ。

 自民党の「派閥解消」なんてスローガンは何十年と聞いてきた。新聞は形式的な「派閥解消」の表明をそのまま受け入れず、もっと派閥がこの国の政治制度をどこまで損なってきたのか、その弊害を徹底的に追及し、実質的な派閥の解消につなげてもらいたいものだ。