論 考

報復は問題解決を誤る

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 ネタニヤフ氏は、ユダヤ人の3000年前からの生存をかけた国作りを掲げて、ハマス打倒を打ち出している。しかし、これは無理がある。

 人質解放を優先すれば相手の術策にはまる。叩けば叩くほど、ハマスが合意を受け入れようとするだろうという考え方もある。もし、人質に異変が起これば、ハマスに対する国際的批判が高まるという計算である。

 イスラエル最大の後ろ盾であるバイデン氏は当初はイスラエル全面的支援の発言であったが、国内のリベラル派や若者層の戦闘中断を求める声が大きくなって、イスラエルの暴走にブレーキをかけつつある。

 国際世論は、休戦論が多数派である。これはイスラエル・アメリカにとって誤算である。放置すれば両国ともに国際的共感を得るどころか、不信感の対象国となる。

 問題解決のためには、力の均衡論だけではなく、問題の本質を押さえて対処せねばならない。

 ハマスをテロ分子と決め付けて報復に熱を上げるべきではない。ハマスの行動は、イスラエルがパレスチナを力で抑えつけてきて、人々から自由を奪っている現状に対する抵抗であり、2国家共存への希望であり、民族独立の思想に根差している。

 これを無視して、単純にパレスチナの人々に対する懲罰論で臨む限り、問題の本質的解決から遠のくばかりである。

 イスラエルが建国の精神を誤らなければ、こんにちのパレスチナ問題は発生していない。あえていえば、ロシア=イスラエル、ウクライナ=パレスチナに見える。