論 考

人気回復の一手

 グテーレス氏が停戦(seasefire)を呼びかけたが、イスラエル国連大使は激怒! して、グテーレス氏の事務総長辞任を要求した。テロを容認して、イスラエルの人々を無視したと怒る。国際世論において、イスラエルの旗色がよろしくないので、焦りもあるだろう。

 グテーレス氏の発言は行為としてのテロを容認したわけではないが、そこへ追い込んだのはイスラエルだということを語った。喧嘩が始まって、どちらに着くのかではなく、喧嘩を止めろという立場だから、ハマスを応援しているわけではない。

 アメリカもブリンケン氏が人道的中断(pause)を語った。停戦ではない。人道物資の運び込みにイスラエルも協力せよという主張だが、イスラエルにすれば容易に応じたくないのだろう。

 トルコのエルドアン氏は、国連安保理事会が機能不全を起こしているのは、姿勢が不公平だ。イスラエルの行動は違法であり、民間人に対する攻撃は自制を欠いていると主張する。ハマスの行動を引き起こしたのはイスラエルの長年の占領が原因だとする。これは、グテーレス氏の支援にもなる発言だ。

 停戦か中断かの違いはあっても、イスラエルの軍事作戦を野放図に容認するとは、アメリカも主張できなくなっている。アメリカは中東でも失敗を続けてきた。レバノンのヒズボラが自制的に対応しているのは、イスラエルとアメリカの間にくさびを打ち込む作戦にも見える。

 バイデン氏にすれば選挙を控えて、イスラエル全面的支持でいくのか、内外世論をどう判断するか。まさか、紛争の拡大を求めてはいないだろう。

 世界的には、じわりとイスラエル包囲網が形成されつつある。

 ガザは食料・医薬品・エネルギーのいずれも枯渇寸前である。もたもたしている時間的余裕はない。人道的という言葉を形骸化させてはならない。

 アメリカの盟友を気取るだけではなく、ここで、日本がアメリカにイスラエルが譲歩するよう提案する――というのは夢物語だろうが、岸田さん、それができれば人気回復にも大きな効能がありますよ。