論 考

自衛の範囲?

 国連安保理事会で、ブラジルが提案したイスラエル・ガザ(ハマス)紛争の「人道的中断」について、12か国が賛成、イギリス・ロシアが棄権、アメリカが拒否権を行使した。イスラエルの自衛権に触れていないという理屈である。

 しかし、イスラエルの自衛権はすでに過剰に行使されている。水・電気・食料・医薬品などの封鎖、ガザ北部の110万人に南部へ異動するように求めたことで、人々は十分すぎる生命の危機状態にある。

 イスラエル国民には、かつてのホロコーストを想起して、徹底的に報復すべきだという声が大きいらしいが、これは無理な理屈だ。

 パレスチナの人々を日常的に非人間的・非人道的境遇に追い込んできたのはイスラエルである。ハマスをテロ組織と規定するなら、なおさら一般の人々に危害を与えないように配慮せねばならない。

 ところが、報復としてはハマスとガザの人々を1つに括っている。現段階での国際的世論形成において、イスラエル陣営は敗北している。

 18日に米議会へ、平和へのユダヤ人の夢というユダヤ人団体100人がデモをかけた。「停戦を」「ガザを生かして」というプラカードを掲げた。数は少ないが、この人々こそがイスラエル国民の針路を示している。

 イスラエルが自衛権にこだわるほど、いままでパレスチナ人に対してとってきた非自衛権! が問われざるを得ない。