週刊RO通信

内閣改造の本音?

NO.1528

 ここしばらく内閣改造と自民党人事についての報道が多い。国民として素直な希望としては、国会論議でまともに答弁せず、言葉の信頼性を失わせた岸田氏の改造? を期待しているのであるから、あまり興味がない。しかし、報道が多いと政府・自民党の露出効果は当然ながら高まる。

 改造・党人事の中身をみれば、2大特徴がある。戦略は政権維持のための手練手管で、戦術は派閥尊重順送りである。第4派閥の岸田派は、とくに麻生・安倍派の取り込みに熱心である。

 党人事をみると、茂木幹事長の台頭を警戒する岸田氏は、更迭したいのは山々だが、下手をすると党内抗争に点火するので、ここはじっと我慢して、茂木氏と同じ派閥の小渕氏を選対委員長にして、茂木氏の足元を揺さぶる作戦という。わかったようなわからない筋書きだ。

 岸田氏期待の星の小渕氏は、2014年に、関連政治団体の支持者向け観劇会費用の不透明な会計処理が発覚し、自身は逃れたものの、元秘書が政治資金規正法違反で有罪になった。また家宅捜索の際、会計のハードディスクがドリルで破壊されており、大変に顰蹙を買った。

 選対委員長就任会見で、政治資金問題の説明責任を問われた小渕氏は、説明のために「地元の700の後援会支部を2年以上かけて回った」と釈明。「十分に伝わっていない部分があれば、不徳の致すところ」とも述べた。

 しかし、経産相を辞任した当時、記者会見はやらず、1年後に地元で記者会見した。後援会はいわば身内、観劇会でサービスされていたのであって、説明しましたと言えるようなものではない。

 公人たる政治家は、行動に疑義をもたれた場合、きちんと情報提供し、丁寧に説明する義務がある。いわゆるアカウンタビリティー(説明責任)で、業務を遂行するレスポンスビリティー(遂行責任)と並んで、2つの大切な義務と責任である。レスポンスビリティーも怪しいがアカウンタビリティーに至っては、政治家のみなさんは眼中にないみたいである。

 政調会長留任の荻生田氏は、旧統一教会との関係がうやむやである。13日の会見では、「今までも機会あるごとに説明を続けてきた。調査結果内容を党に報告し、関係を断っている。現段階でなにか説明不足だという指摘は当たらない」という。説明不足で全容解明とはいえないから質問しているのに、説明不足だという指摘は当たらないと応ずるのは答弁しないのと同じだ。

 もっとも深い関係にあった安倍晋三氏を死亡という理由で、自民党は調査対象から外した。真相解明など本気で考えていない。「人のうわさも七十五日」というが、とにかくその場をしのいで時間が過ぎれば、世間の批判は消えるという、もっとも単純にして古くから使われる常套手段である。

 自民党の文化は、こうしたスキャンダルや政治的窮地をいかに乗り越えてきたかが、尊重されるのではないか。いわゆる歴戦の勇士というわけだ。脛に持つ傷が大きいほど大物という見方があるのではないか。もしそうならアカウンタビリティーなど歯牙にもかけないはずだ。

 岸田氏はよくいえば、単純思考である。本音をうまく隠すような芸当はできない。選対委員長に小渕氏というのは「選挙の顔」が務まるのかという党内の心配もあるらしい。しかし、岸田流の本音では、脛に傷だからこそ顔なのだと喝破するのかもしれない。

 いずれにしても、改造・人事刷新の狙いは内閣支持率押し上げにあると思うのは外部の見方である。岸田氏が第一に狙うのは、権力争奪戦と派閥均衡という、昔から不変のテキスト通りで、顔触れを見ても、格別の新鮮味、意外性もない。閣僚に女性5人採用して、副大臣・政務官に女性採用0というのを見ても、支持率のためのポイント稼ぎなど二の次である。

 そこには岸田流の読みがある。これでも意識調査をすると、どういうわけか支持率が上がるだろう。かりに、ここでさほどの支持率上昇がなくても、ただちにピンチを招くことはない。

 国民としては、人事だけではどんな仕事をするかわからない。これで人気が上下するのもおかしな話だが、政権の動向に一喜一憂する癖をつけることはできる。ま、それなりに戦略的なのでもあろう。