論 考

外交プロパガンダ

 BBCに、ロシア外交がプーチンの権力によって姿を消し、目下外交は国内向けの宣伝に傾倒しているという評論が掲載された。

 それはいつごろからか。2007、8年ごろという見立てである。外交官はそれまでは外交官らしい活動をおこなっていたが、いまや保身一筋、国内宣伝に活路を求め、「仕事をやっています」感の演出に打ち込んでいる。

 プーチンの思想は、西側諸国が一極世界をつくろうとしていることに対して猛反発し、同時にロシアが大国として押しも押されぬ地位を獲得するにある。

 当時、安倍氏はプーチン政権が盤石だから、国内に邪魔をする勢力が存在せず、北方領土が還ってくると目論んだ。

 プーチン政権の盤石の見通しは妥当だったが、大ロシアの領袖たりたいプーチンの思想を完全に読み違えていた。経済的に苦しいからロシア国内の経済開発を支援すれば交渉は成立すると見たわけだが、的外れの物語をつくって一人芝居を展開した。

 鳴り物入りだった対ロシア安倍外交の総括などまったく無関心のようだが、なぜ、かくも盛大な失策をおかしたのか、検証するべきである。

 日本は、アメリカ追随外交で盤石という幻覚のなかにあるが、このように根本からまちがう外交を放置したのではまずい、いや、危うい。

 もし安倍氏の独断と偏見でかき回されたというならば、いまのロシア的状況とほとんど同質ではなかろうか。

 15年戦争も、仕上げの大東亜戦争も、全体の戦争戦略から個別の戦略戦術まで、たくさんのまちがいを起こしている。

 報道機関にぜひ事例研究してほしい。