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“野党第一党入れ替え戦”の薦め

司 高志

 コロナ対策の無策とオリンピック強行で、政権はまさに雪隠詰めのカド番だ。もはや背水の陣も堕ち、あとは転げ落ちるのみ。

 コロナ対策に関しては、総理のどケチぶりのみが目につく。とにかく国民には「びた一文払うもんか!」という強い意志が感じられる。利権につながらない、還流してこないお金は払うつもりはなく、税金は俺たちのものだと暗に公言しているようなものだ。

 お金を払わずできることと言えば、緊急事態宣言の出し入れの繰り返し。要請だけなら補償金を払う必要がない。「これが最後の緊急事態宣言」とも言っているが、最後の宣言にするには永久に解除しなければよい。宣言があけるのと自民が転落するのと、どちらが早いかの問題だとも言えるが。

 加えて、コロナに罹患してしまうと、健康保険に入っているのに病院で診てもらえず自宅での療養をとか、国民に対しては医療を提供できない重大な背信行為、まさしく税金泥棒としか言いようがない。

 こうして国民には負担を強いる一方で仲間内では、オリンピックを強行して利権を配分し続ける。中抜き率50~90%と言われる契約と、黙っていても契約総額の10%の管理費がついてくるD通やPソナはウハウハだ。

 これに加えてアホウ罪務大臣がまたまた、国民に一律給付をしても貯金に回るだけとか、見当違いのことを言っている。現実の姿がまったくわかっていない。給付は個人の口座に振り込まれるので、一時的には貯金されたように見えるが、預貯金の口座からは、税金や電気・ガス、クレジットの引き落としが行われるので、貯金されたかどうかは断定できない。

 そして税収が増えたとかも言っているが、個人が潤って消費が伸びているのではない。国民から無理やりむしり取る消費税と海外への輸出で企業が稼いでいるだけで、国民は青息吐息なのだ。もう一回言うが、まったくアホウな罪務大臣だ。

 子は親の背中を見て育つと昔から言われる。総理の背中は煤けているのが国民からはミエミエなのだが、しかし、間違えてはいけないことがある。

 報道によれば、総理の狙いはオリンピックを強行して、日本の選手がメダルを取れば政権が浮揚すると言っているのだが、真の狙いは選挙から興味をそらし、投票行動を取らせないことだ。ここが無茶苦茶重要なのだが、政権の支持率がいくら落ちようがそんなものはどうでもいい。選挙に行かず、投票しないでいてくれれば、それが一番の成功なのだ。

 具体的に支持・不支持率で説明する。現在のところ政権の支持率は大体30%程度である。これの中身を想像してほしいが、これだけ政権がめちゃくちゃでも支持する人が30%もいるということは、これは、自民の強固な岩盤支持層か、自民党信者だ。この30%は雨が降ろうが、雪が降ろうが、嵐が来ても自民に投票する人たちである。

 対して、不支持層は、自民はけしからんと思い、不支持だと言っている人たちである。だが、本当に選挙に行って野党に投票するのかと言えば、必ずしも選挙に行く人たちではない。投票率が50%だとすれば、不支持表明の60%のうち投票に行くのは半分の30%くらいだ。ということは、投票率50%で互角といった感じになる。投票率45%くらいまで下げてしまうと、もはや勝ち目はない。だから、報道を見て、「自民負けそうだから投票に行かなくていいや」と考えたら、まんまと術中にはまっている。

 さて、日本が不幸なのは、背中が煤けて見えるのは自民だけではないということだ。野党もまた、故意に無策で有権者のことは考えていないように見える。

 野党へは自民への批判で必ず票が入る。だから、何もしないで棚から牡丹餅を決め込む。仕事はゼロまたは最小にして、票だけはいただきという狡いやり方を旨としているように見える。下手に何かすれば労力がかかり、間違っていれば批判される。多少票が減っても何もしないのが一番効率がいい、というのが信条のようだ。

 自民の高市議員が、総裁選に出馬するため、インフレ率のターゲット2%、税収と支出のバランスを凍結と公言しているが、高市議員が勝ってしまうと野党の勝ち目は一気に失われる。しかしそれでも、だんまりを決め込むのが得と思っているところがなんともむなしい。

 最後に。今まで消去法で自民に入れていた人が、それでも野党には投票できない、という声をインターネット上でよく見かける。確かに今まで自民に入れていた人が野党に入れるというのは、心理的障壁があるだろう。そこでこう考えてはどうだろう。

 自民党の補完勢力となっている野党第一党に活を入れるため、あえて別の野党に入れて投票行動の流動化を高めてみよう。今の日本の選挙ではあまりに流動性が乏しいので、流動性の呼び水として、野党第一党の入れ替え戦をしてみよう。何はさておき投票に行かないのが一番いけない。