月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

目前の困窮者は明日の私かも

渡邊隆之

 現在も手指の消毒・マスク着用による感染防止策が続いている。原因と対策についての客観的合理的説明が十分になされておらず、緊急事態宣言に基づく自粛を経たが、そこからの回復が遅い。事業活動では売上高や経常利益が大きく落ち込み、廃業や倒産危機の企業も増え続けている。

 近くの商工会議所の方の話によると、企業も二極化しているそうだ。社内留保等でなんとか対応できるところと、そうでないところと。特に後者については、思い切って給付金や補助金等を申請し休業を選択しているところも多いという。店舗を開いても来店客数の戻りが少なく、結局、開店休業状態になるからだそうだ。地域の商店街は人口減少と後継者不足の問題を抱え、コロナ前でも閑散としていたが、このままでは今まで以上に活気が失われてしまう。今までの文化・インフラを継承しセールスポイントを強く訴求するか、大胆なコンセプトの下、抜本的に街並みを変えていくか、地元住民としても他人ごとではない。

 一方、今回のコロナ禍はマイナス面ばかりでもない。顧客や従業員の安全確保を考えて企業側も新しい取り組みを導入している。在宅勤務やリモート会議など、これまでのような拘束時間の長い働き方の変更も進んでいるように見受ける。

 先般、ユニクロ系列のGUでジーンズを購入したところ、セルフレジだった。レジ作業員はいない。購入予定の衣料品カゴを所定の場所に置くとセンサーにより購入金額が自動的に計算され、合計金額が表示される。クレジット決済の場合、所定の場所にカードを挿入すると、決済が完了する。本人署名も暗証番号入力もなく会計作業が済むので、少し気持ちの悪さは感じたが、レジの打ち間違いはなくスムーズである。

 一方、袋を購入せず、店外に商品をそのまま持ち出すのは心理的な抵抗がある。そこで従業員に購買済みのシールの貼付は必要ないのか確認したが、そのシールも置いていなかった。人件費や販促資材を抑えつつ、従業員はより優先すべき作業にシフトできる。顧客や従業員の感染リスクも抑えられる。店を出る際、なぜか星新一のショートショートを思い出している自分がいた。

 わが同業者間の研修会も圧倒的にZOOMでの受講が増えた。資料もメールやネットからダウンロードできるので、移動時間のロスと交通費・資料代の支出が減り、その点ではメリットがある。しかし、講師へのつっこんだ質問ができず、その点では物足りなさを感じる。IT化は確かに便利ではあるものの、商談や個別相談などの際、第六感を働かせないと情報を得られないものもある。

 同業者の間では、“ハイブリッド”という言葉を耳にすることが多くなった。IT活用によるテレワークと対面型業務をどうバランスよくこなしていくか、それが新しい課題となっていくことと思われる。

 ところで、経済回復に向けてGoTo〇〇やマイナポイントが強く宣伝され、巷の方々もそれに躍らされているが、光の当てられていない方々のことも、もっと報道されてしかるべきではないか。まず路上生活者の件。

 特定定額給付金の申請用紙は住所のある各世帯主宛に送られていたはずである。企業の雇止めなどでやむなく路上生活者となった方もいる。このような方たちへのセーフティーネットの拡充や理不尽な内定取り消し・雇止めが起きないよう、企業への支援や監視をもっとすべきではないか。

 加えて外国人労働者への処遇である。労働力不足解消を期待されて来日したものの、コロナ感染拡大に伴う経済活動の萎縮で、外国人に違法・不当な解雇が生じている。

 目先の困窮者は「将来のわたし」かもしれない。国籍や言語の壁を越えて、心でつながる活力のある社会をめざしたいものである。