月刊ライフビジョン | off Duty

zoomで初盆

曽野緋暮子

 いつもの夏休みの、「皆揃ってラジオ体操」がないまま、8月19日から小学校の二学期が始まった。酷暑だと思った昨年より一層酷暑になった今年、真夏に通学の子ども達は大変だ。コロナで売り上げ不振の地元帽子製造業者が市内の小学生に麦わら帽子をプレゼントしたとニュースになっていた。家の前を通る小学生が布の制帽の代わりに色とりどりの麦わら帽子を冠っている。更に日傘をさしている小学生もいる。小学生が日傘!これも新しい生活様式の一風景なのだろう。

 今夏、実家で初盆を迎えるにあたり、弟からzoomを使ってリモート初盆をやろうと提案があった。コロナで一気に認知度の上がったzoomだが、会社勤めをしている訳でもなく、対面での習い事をしている訳でもなく、パソコン画面に向かって飲み会をすることもない私にzoomは全く縁のないツールだと思っていた。

 確かな感染経路がわからず、ワクチンもなく、収束の目途が立たないコロナが相手なので、親族だけとは言え、皆で集まることは難しい。無理して集まり運悪く感染者が出たら、地元の感染者第一号になったらと思うとzoomに取り組む方が簡単だと思えた。仕事で使っている弟からLINEでレクチャーを受けた。参加するだけなら何とかなりそうだ。

 当日、弟からLINEでIDとパスワードを受け取りzoom開始。画面に初盆飾りの祭壇、参加者が映る。声は聞こえるけれど4画面しか出ないので姿は見えずの人も。「スマホだと4画面しか出ないからスワイプして」と姪からアドバイス。「なるほど!」私と姉はスマホだが、他の参加者は普段使いのパソコンだ。パソコンだと多くの画面が出るそうだ。

 コロナ対策で僧侶はお願いせず、弟が簡単に読経。その後各自近況報告になったが、どのタイミングで話し始めればよいのか?話を聞いている時にどんな顔していればよいのか?「ピンポン!」が鳴って、玄関に向けて画面から消える姉。非接触の体温計をネット購入したと皆に見せる姉。サークルで集まる時に、会場管理者から出席者の体温を測るように言われたそうだ。「体温計は店頭から消えているよね。ネット販売は中国製だよね。」と、話題が一瞬盛り上がる。

 久しぶりに皆の元気な顔を見ることができたのは良かったが、慣れないせいか、何となく落ち着かないなぁ… zoom飲み会って、慣れれば楽しいのかなぁ?

 翌日、姪がブログに 「高齢の両親や親族が抵抗なくzoom初盆に参加したことで、何事を始めるにも年齢は邪魔しない。好奇心があれば何でもできると元気を貰った。」と書いていた。う~ん!これって褒められたの?

 セキュリティの甘さが不安で嫌がっていたLINEを、今では便利ツールとして受け入れている時代のこと、個人情報がダダ漏れを承知でzoomを使ってみるのもありかと思い、パソコンにもzoomをインストールした。が、相手がいなければお試しができない。

 と思っていたところ、金融関係に務めている後輩から「曽野さんってzoomを使っています?」と電話がきた。「一度だけ使ったことがある。パソコンにもスマホにもインストールしているよ。」と答えた。相続関連のウエブナー(webを使ったセミナー?)があるが、平日の午前中で現役の人が参加できない。リタイア生活者でzoomしている人が少なくて参加者を探しているとのこと。これはちょうど良い機会なので参加を了承した。いつ退出しても良いと言うのも気が楽だ。

 当日。パソコン画面いっぱいの進行役の女性の瞬きが気になる。多分、カメラを見つめているのだろう。時々何とも言えない間があく。偶にインターネット接続不良のメッセージが出て音声が途切れたり、画面がストップする。一方的なセミナーだから良いが、有料の講座だったらイラつくだろうなあ。学校の授業がzoomでとなると、カメラ付きパソコンがあり、インターネット接続環境が整っていて、軽微なトラブル対処ができる人が近くにいないと難しいと思った。

 新しい生活様式はマスク、手洗い、ソーシャルディスタンスにとどまらず、高齢者にも様々なITツールの活用を、強いられるのであろうか。