論 考

美味しい生活

 食品ロス削減推進法案が話題だ。食品廃棄物は年間2842万トンあり、今回の法案の狙いは、食べられるのに廃棄されている(食品ロス)のを減らそうという狙いで、食品ロスは643万トンだとされている。

 食品ロス全体の1/2が食品関連事業。これは、製造・外食・小売の分野である。順番に137万トン・133万トン・66万トンだ。家庭は291万トン、つまり後の半分はそれぞれの家庭に無駄が大きい。

 実態調査はかなり大変で、数字はどこまでも推測である。法案が可決されても、結局、1人ひとりがどう取り組むかに帰着する。

 賞味期限切れで廃棄するケースが多いらしい。これは食べてはいけない消費期限とは異なる。食べられるのに捨てているというわけだ。

 食生活は日々の暮らしの大切な場面である。

 『美味礼賛』を著したブリア・サヴァラン(1755~1826)は、「禽獣は食らい、人間は食べる。教養ある人にして初めて食べ方を知る」「国民の盛衰はその食べ方のいかんによる」など、食について博物・物理・化学・料理術・商業など多面的に食の文化論を展開した。

 彼は亡命したとき、極めて切り詰めた暮らしを余儀なくされたが、常に工夫して美味しい料理を作ったという話だ。

 もちろん、「もったいない」論は大事であるが、さらにその前に、食事を楽しく愉快にする、という生活文化を注目したい。

 要は、おいしい食事をするために働くのである。