論 考

アメリカ的ポピュリズムの行方

 モラー特別検察官は、報告書に「捜査は、トランプ陣営の関係者が、ロシアの選挙介入活動と共謀もしくは連携したという事実を、確定しなかった」と書いた。バー司法長官が、上下院司法委員会委員長および筆頭委員にあてた手紙は、すべてこれに基づいて構成されている。

 報告書は、「2016年大統領選挙へのロシア介入に対する捜査に関する報告」と題されている。

 報告書第一部では、ロシアの謀略は事実だが、それと共謀もしくは連携したという「事実」を確定しなかった、というのがミソである。

 「連携」の意味は、暗黙もしくは明示的合意を意味すると定義している。動かぬ証拠がつかめなかったということだろう。非常に微妙である。民主党が全文公開せよという論拠になりそうだ。

 第二部では、トランプ氏が司法妨害したかどうか。この結論は「大統領の犯罪という結論は出していないが、無罪を認定するわけではない」というものである。第一部の内容よりもさらに大統領の犯罪性について踏み込んだ表現である。これはさらに懐疑を深める内容だ。

 塀の上を歩いていて外側にかろうじて落ちたという感じである。

 BBC記者が、22か月もの続いた疑惑捜査で、国民はうんざりしている。「さあ、終わった。先へ進もう」という世論になるのではないかと書いた。

 果たしてそのような動きになるだろうか。アメリカ的ポピュリズムと日本的ポピュリズムは同じであろうか。読売は「米政治の混乱は収拾できるか」と本日の社説に書いた。納得しなければ決着しないと、わたしは思う。