論 考

機能性表示食品

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 わたしは、サプリメントの類は興味がない。新聞本紙の広告と織り込みチラシが多いのに驚いていても、ほとんど目を通さない。

 紅麹商品による事故が発生したので、厚労省の資料を少し調べてみた。

 健康食品とは、健康の保持増進に資する食品全般。サプリメントとは、特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の商品をいい、通常の食品から菓子、飲料、医薬品と類似したものまでいろいろある。ただし、行政的定義はない。

 アメリカの定義が紹介されており、それによると、従来の食品・医薬品とは異なるカテゴリーの食品で、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブなどの成分を含み、通常の諸君と紛らわしくない形状のもの、である。

 今回問題になっているのは、機能性表示食品というカテゴリーで、事業者の責任で科学的根拠を基にパッケージに機能性を表示するとされており、消費者庁に届けるのみで、消費者庁長官の個別許可はない。

 2015年から採用されている。なるほど、産業に活力をもたらしたいという安倍内閣の置き土産の1つである。

 消費者庁のパンフレットには、「機能性表示食品制度は、消費者の自主的かつ合理的な商品選択の機会の確保を促す制度です」とある。続いて生産者については、「制度の正しい理解に基づいて消費者の誤解を招かない情報提供を、責任をもっておこなう必要があります」とある。

 前者については、消費者はすべての商品について自主的かつ合理的選択をしているつもりであるから、わざわざ意見してもらう必要はない。そんなことより、「機能性表示食品」と名付けることによって、あたかもお役所が許可したように錯覚するだろう。後者については、いかなる商品についても至極当然の話である。

 そもそも、健康食品、サプリメント、機能性表示食品の違いについて、消費者が十分に認識しているとは考えられない。たぶん、健康によい「薬でない薬」程度の認識であろう。

 健康によいのだから、製造者の情報提供=宣伝をうのみにして、効能があることを期待して服用する。これらの商品は消費者の約30%が毎日服用しているらしい。宣伝、チラシが華々しく盛んなわけだ。

 役所が、わかったようなわからない定義をするのは仕事柄だとしても、それを人々は安心の保証だと思うし、すでに、消費者の自主かつ合理的な選択の目玉がかすんでいると考えられる。

 今回は、「意図しない、未知の物質」という、なにやら、想定外の天変地異みたいな表現が使われているが、問題の本質は、健康によろしいとか、薬もどきの商品について安全性が企業任せになっていることだ。また、安倍氏の置き土産の1つが騒動を引き起こしたという所以である。