論 考

ASEANと日本

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 ASEAN(東南アジア諸国連合)は1967年、インドネシア・シンガポール・タイ・フィリピン・マレーシアの5カ国で結成された。その後、ブルネイ・ベトナム・ラオス・ミャンマー・カンボジアが加盟して10カ国である。人口では6.6億人、GDPでは世界第4位に相当する。

 日本は1973年から友好協力関係を深めてきたが、経済的に見ても、当時と今とではASEAN諸国の力が大きくなった。かつてのように、「してあげる」型は通じない。日本としては、まさにASEANプラス1として、域内協力をさらに育て上げたいところである。

 ASEANの特徴は、いわゆる全方位外交である。世界を二分化するような思想で接したのでは、必ず拒否される。もちろん拒否の仕方は、ASEANらしく波風立てないスタイルであるが、だからなおさら日本は慎重に相互協力連帯関係を推進するべきである。

 理想! をいえば、日本は西側とASEANの仲立ち・橋渡し役として頼れられるべきである。くれぐれも、米中いずれに就くかというようなスタンスを押し出してはならない。

 ASEANから見れば、日本の製造業はかつてのように輝いていない。中国・韓国・台湾の勢いが圧している。また、日本が対米追従で、独自色を出せないことについても評価はよろしくない。

 「ASEANプラス1」という位置づけも、少し考えただけで容易ではない。日本の外交路線を修正する気構えがないと、ASEANは次第に遠のいていくだろう。